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2018年12月03日
山岳トンネルの品質や施工性を画期的に改善 -新設トンネルの覆工コンクリートのプレキャスト化を模擬覆工で検証-

当社と戸田建設(株)(社長:今井 雅則)、ジオスター(株)(社長:瑞山 真吾)は、狭隘な空間での作業を無くすことで、さまざまなメリットが期待できる覆工コンクリートのプレキャスト化に向け検討を重ねています。このたび模擬覆工を用いてその可能性を検証し、実現への取り組みが、さらに進展しました。

 

写真-1 模擬覆工を用いた試験状況

 

1.開発の背景~狭隘な空間での作業による問題の解消

山岳トンネルの覆工コンクリート工事は、吹付けコンクリートとセントル※1の間の狭隘な空間にコンクリートを打ち込む作業であるため、以下のような問題への対処が必要となります。

(品質面の問題)
①天端部コンクリート:吹上げ方式で打設され、施工状況を視認できないため、巻厚不足や締固め不足等の懸念があります。
②打継部コンクリート:次工程施工時に若材齢である打継部にセントルが押し付けられると、ひび割れ発生の懸念があります。
③乾燥収縮や温度変化:これらに起因してひび割れが発生する懸念があります。
これらの問題に対する対策としては、流動性の高いコンクリートの使用、バイブレータ使用や監視センサ等の様々な品質確保・向上技術が開発されており、不具合は減ってきていますが、完全に防止するには至っていません。

(作業環境面の問題)
セントル内部は、余裕のあるスペースがほとんどなく、作業環境は決して良くありません。セントル面板のケレン、剥離剤塗布、コンクリート打込み時の配管切替や棒状バイブレータを用いた締固め等は苦渋作業となります。

そこで、3社は覆工コンクリートのプレキャスト化により、狭隘な空間での作業を無くし、覆工コンクリート自体の品質向上を図るとともに、作業環境の改善・効率化による生産性向上を図ることを目的に検討を行ってきました。

2.プレキャスト化の概要~プレキャスト化実現への取り組み
(1) 仕様・形状
①薄肉化による施工性確保(300㎜→170㎜~230㎜)
従来、覆工コンクリートの部材厚さは経験工学的に300㎜以上に設定されてきました。プレキャスト化にあたり、薄肉化による施工性の確保が必要であるため、現在の部材性能を満足する仕様を検討し※2、170mm~230mmの厚さに設定しました。

②搬送に適した形状を工夫
・3つに分割して搬送(図-1参照)
製造場所から運搬可能な形態とするために、プレキャスト化した覆工(以下、PCa覆工)は基本的に3分割としました。
・坑内への搬送を容易にする脚部形状の工夫(図-2参照)
PCa覆工の脚部形状は、坑内への搬送時の安定性と設置後の構造的安定性を両立するために2面構造としました。一つは従来のトンネル形状を基に、やや外側に厚みを持たせ、搬送時にレール上を安定走行するための水平なローラ接地面であり、もう一つはローラ除去後にインバートコンクリートと接続する面で、現場打ちの場合と同様にトンネル中心を向く角度を付けました。

 

                                  

                                                                図-1 PCa覆工の分割の例

 

                                                  

                                                     図-2 PCa覆工の脚部形状     

 

(2) 施工方法~プレキャスト化により作業空間を確保
①施工ステップ(図-3参照)
坑口部で2リング分のPCa覆工を組み立て、レール上を運搬して坑内の奥から順次設置し、PC鋼棒でトンネル軸方向に接合します。一定の区間ごとにPCa覆工背面に裏込め注入し、この作業を繰り返すことで覆工コンクリートを完成させます。
②切羽作業の同時進行も可能
組立、運搬および設置時は、坑口部および坑内に切羽作業の重機やダンプトラック等が通行できる空間を確保しているので、切羽作業と同時進行が可能です。
③コストダウンの工夫(図-4参照)
運搬に使用するローラは、回収が可能なように、レールの基盤となるインバートコンクリート※3に切欠き部を設けるほか、設置方法も工夫し、コストダウンを図っています。

※3:インバートが存在しない区間にも連続的にレールを水平設置するための基礎コンクリートを施工

 


  

図-3 PCa覆工の施工ステップ図

 

図-4 PCa覆工の設置方法

3.プレキャスト化の効果
(1) 生産性向上
・現場打ちに比べて覆工コンクリートの施工速度が約1.5倍に早まります。
・ 熟練工を必要としません。両坑口からPCa覆工の運搬が可能で、施工班数を増やすことで、さらに工期短縮を図れます。

(2) 品質向上
・プレキャスト製品を使用するため、均質かつ緻密なコンクリートとなり、耐久性が向上します。現場打ちで懸念される天端部の巻厚不足や締固め不足等が発生しません。
・セントルを使用しないため、セントル押付けによる打継部付近のひび割れや剥離が発生しません。
・製造時に十分な養生が実施できるため、乾燥収縮や温度変化に起因するひび割れを抑制できます。

(3) 安全性向上
・狭いセントル内での苦渋作業が無くなるため、安全性が向上します。
・坑内でセントル等の大型設備の常設が不要となるため、車両通行時の安全性が向上します。

(4) 環境影響低減
 ・覆工コンクリートの薄肉化により、掘削土量やコンクリート使用量が少なくなるため、トンネル工事に伴い発生する二酸化炭素の排出量を削減できます。
・坑内におけるコンクリート打設数量が減りトラックアジテータの坑内走行やコンクリートポンプ車の稼働が低減されるので、排気ガスや粉じん発生が抑制され、坑内環境を改善できます。

(5) ライフサイクルコスト低減
・トンネル施工費は現場打ちに比べて割高となりますが、覆工コンクリートの品質向上により供用時の維持管理頻度が少なくなるため、ライフサイクルコストを低減できます。

4.模擬覆工を用いた試験
検討結果に基づき、模擬覆工を用いた試験を実施しました。PCa覆工の組立・運搬・設置に至る一連の施工方法に対する妥当性を確認しました(写真-1参照)。


5.今後の展開
山岳トンネル工事では、現場毎にトンネル線形、勾配、各種設備を設置するための箱抜き等の特徴が異なるため、覆工コンクリートのプレキャスト化の実現のためには、解決しなければならない課題が残されています。しかしながら、生産性、品質、安全性、環境影響、ライフサイクルコストの面から覆工コンクリートをプレキャスト化することのメリットは大きく、それを前提とした設計・施工を検討することで、実現への課題は解決できると考えています。
本発表は、その一環として施工の合理化、高品質化に向けた覆工コンクリートのプレキャスト化の実現可能性を示したものです。