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2019年03月27日
堆積物微生物燃料電池(SMFC)式バイオセンサーを用いた溶存酸素(DO)濃度連続計測技術を確立 -微生物で底質(ヘドロ)を分解して発電し、その電力で底層溶存酸素(DO)を連続計測-

当社は、群馬大学大学院(理工学府 環境創生部門 渡邉教授・窪田助教)と共同で、堆積物微生物燃料電池(SMFC)式バイオセンサーを用いた自立電源型システムによる溶存酸素(DO)濃度連続計測技術を確立しました。
堆積物微生物燃料電池(以下SMFC)は、底質中の嫌気性発電細菌による有機物分(ヘドロ等)の分解(代謝)で生じた電子を底質中に設置したアノード(負極)を経由して、水中に設置したカソード(正極)上で溶存酸素(以下DO)と反応することで発電する技術です。
この時、SMFCが水中のDO濃度に応じて発電量(電流/電圧値)が変化する性質に注目し、発電量の変化から任意の水深におけるDO濃度を連続計測できるSMFC式バイオセンサー計測システムを構築しました。

 

■ 背景
内湾・湖沼等の閉鎖系の一部の水域においては、ヘドロなど有機物の多い底泥が原因で貧酸素水塊が発生し、水生生物の生育や異臭・アオコの発生など水利用等に障害が生じています。
このような現状を踏まえ、特に公共用水域における底層を利用する水生生物を保全・再生する観点から、これら水域中のDOを監視することを目的として、2016年3月に環境省は新たな環境基準を設定しました。
上記背景から底層DOの常時監視・計測のニーズが飛躍的に高まると考えられることから、長期間に亘ってメンテナンスフリーかつ安定した連続計測ができる装置の需要が伸びることが予想されます。
しかしながら、現状で多く使用される隔膜電極法等の測定機器は、測定精度に優れるものの、電極の消耗や電解液・隔膜の交換などメンテナンスが煩雑であるため、長期間のモニタリング使用にはあまり適さず、また、閉鎖系水域のモニタリング位置によっては電源の確保に支障があるため、常時監視においては自立電源型によるシンプルな計測システムがより望まれています。

■ 本技術の概要
本技術は、堆積物微生物燃料電池(Sediment Microbial Fuel Cells、以下SMFC)を応用したバイオセンサー式DO濃度連続計測技術です。SMFCは微生物燃料電池の一種であり、底質中に生息する発電微生物の作用を利用して、有機成分を多く含む底質(ヘドロ)を分解しながら発電する電池です(図1)。
具体的には、①底質に設置したアノード(負極)周辺の発電微生物が有機物を分解する過程で獲得した電子をアノードに受け渡し、②アノードに受け渡された電子が導線を通り、水面近傍に設置したカソード(正極)へ電子が流れ、③カソード上で溶存酸素(DO)と電子が反応・消費されることで電力が生じます。このように、底質のヘドロを分解・浄化し、一方で微生物燃料電池として電力も発生させることができるため、創エネルギー型の浄化技術として注目されています。
このSMFCにおいて、アノード側の発電量とカソード側のDO濃度変化との間に高い相関を有することを共同研究において見出し、この現象を応用してSMFCの発電量の変化からDOを連続計測するバイオセンサーとしての測定技術を今回確立したものです。

■ 本技術の特長
① SMFCの発電原理を応用した、閉鎖系水域中におけるDO濃度を連続計測できるシステムです。
② SMFCによって底質(ヘドロ)を分解しつつ発電した余剰電力を有効利用できるため、外部電源を必要としない自立電源型バイオセンサーとして、電源確保が困難な場所において安定的に連続計測が可能であり、必要に応じてその場でDO濃度を表示できます(DO濃度の見える化を推進)。
③ 本センサーは、微生物による発電を担うアノード、水面近傍に設置するカソードA、底層(測定対象水深)に設置するカソードB、及び補器類(抵抗器、電流/電圧計等)から構成されるシンプルな計測システムであり、従来の隔膜電極法等のDO計測装置で必要とされるメンテナンス(電極や電解液・隔膜の交換等)が不要なため、長期間の計測に適しています(図2)。
 

図1 SFMCによる発電・底質浄化のしくみ

 

図2 SFMC式DOバイオセンサーの計測原理

■ 今後の展開
本技術については、実環境での適用を見据えた検討を進め、実用化に向けての開発を継続してまいります。本技術の実用化により、貧酸素状態を起こしやすい閉鎖系水域の底層で生息する水生生物の保全、及び良好な底質環境の維持に寄与すると共に、環境にやさしい創エネルギー型バイオセンサーである本技術を普及することで、将来にわたってより望ましい水環境の実現に貢献してまいります。