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2020年06月29日
高層鉄筋コンクリート造建物の柱梁接合部のプレキャスト化率を向上「アジャストビーム構法」を開発 -ヒンジリロケーション技術をプレキャスト構法に応用-

当社は、高層鉄筋コンクリート造建物の柱梁接合部のプレキャスト化率を向上できる「アジャストビーム構法」を、静岡理工科大学丸田誠教授の指導のもと開発しました。
従来の中柱梁接合部分は運搬上の制約からプレキャスト化が困難でしたが、本構法は地震時の梁の降伏ヒンジ*1位置を調整すること(ヒンジリロケーション技術)で、中柱梁接合部分のプレキャスト化を可能とし、施工の合理化および工期短縮を図ることができます。
*1降伏ヒンジ:曲げに対する抵抗力が上限に達して、その抵抗力を保持したまま変形が生じる状態

■背景
鉄筋コンクリート造の柱梁接合部は多くの鉄筋が混み合う箇所であるため、プレキャスト化による合理化・省力化工法が望まれます。プレキャスト部材の接続に一般的に用いられる機械式継手は、A級継手*2であり、その認定上の制約から、降伏ヒンジ領域を避けた位置に設ける必要があります。従来の梁の場合、降伏ヒンジ領域は降伏ヒンジ位置の柱面から1Dまでの区間(D:梁せい)であることから、中柱接合部のプレキャスト部材長さは、運搬車両で積込できる長さ2.4mを超えてしまい、プレキャスト化が困難でした(図1参照)。
*2「2015年版建築物の構造関係技術基準解説書」の「鉄筋継手性能判定基準」で規定される機械式継手

■構法の概要
従来の梁は梁主筋を同径・同強度で継手接続するため、降伏ヒンジ位置は柱面となりますが、今回開発した「アジャストビーム構法」(図2参照)は、ヒンジリロケーション技術を活用して、梁端部から接合部内の主筋(梁端補強部主筋)を梁一般部主筋より太径・高強度化することで、降伏ヒンジ位置を継手先端位置で成立させます。機械式継手を柱面寄りに設置できることから、運搬車両に積込できるプレキャスト接合部を実現できます。
なお、本構法は機械式継手を柱面から0.1D~0.3Dの範囲に自由に設置できるように開発しました。機械式継手位置を変化させることで梁の曲げ強度を調整できるため、設計自由度が高いことが特徴です。例えば、機械式継手位置を離して梁の曲げ強度を大きくすることができるため、梁一般部主筋を削減したり、ロングスパンに対応させることが可能です。
また、ヒンジリロケーションによって降伏ヒンジ位置を柱面から離すことにより、見掛けの接合部形状が大きくなるため、接合部内主筋の付着改善や柱梁接合部の曲げ降伏防止等の効果が期待できます。

 

図1 従来の梁および中柱接合部

 

図2 アジャストビーム構法

 

■構法の耐震安全性
中柱を想定した十字形骨組実験では、降伏ヒンジ位置が継手先端位置に形成されること、大変形の層間変形角1/25rad.まで安定した復元力特性を発揮できることを確認しました(写真1参照)。また、曲げ破壊型のほか、梁のせん断破壊型および付着割裂破壊型、更には接合部せん断破壊型といった様々なパラメータでも実験を行い、ヒンジリロケーション骨組の終局性状を明らかにしました。
耐震安全性を確認するにあたっては、構造実験に加えて、解析的検証を行いました。従来の梁は柱面で降伏ヒンジを形成しますが、ヒンジリロケーション梁は継手先端位置で降伏ヒンジを形成するため、その弾塑性挙動は複雑となります。変断面部材の弾性たわみ曲線式と菅野式を用いた復元力特性に基づき、ヒンジリロケーション梁の弾塑性挙動を再現できる解析モデルを構築しました。
以上、多数の構造実験および解析的検証により耐震安全性を確認し、これらを基に本構法の構造設計法を確立しました。

■主な特長
本構法の主な特長は以下のとおりです.
➢ 高層鉄筋コンクリート造建物の中柱接合部のプレキャスト化を可能とすることから、施工の合理化および工期短縮が可能
➢ 機械式継手は柱面から0.1D~0.3Dの範囲に設けることができ、梁の曲げ強度を調整できることから、設計自由度が高い

■今後の展開
鉄筋コンクリート造建物の施工の合理化および工期短縮を主な目的として、高さ60mを超える鉄筋コンクリート造建物の設計・施工物件に対して,「アジャストビーム構法」の適用を積極的に推進する方針です。

 

写真1 十字形骨組実験(層間変形角1/25rad.)

 

表1 適用範囲