Project #3開発系

「地方創生」を大きな使命に、
持続可能な
賑わいのあるまちづくりを。

山形県・酒田駅前地区第一種市街地再開発事業

PROJECT OUTLINE

酒田駅前地区は、1997年に大型商業施設が郊外へ移転する形で閉店してからの約20年、商店や人口の減少による衰退化で、再整備が望まれていたエリアでした。酒田市は市内外から多くの人が集まる場所づくりを目的に、官民一体となった駅前地区の再整備を計画。西松建設は2016年に酒田市が公募した民間事業者に名乗りをあげ、プロポーザルによる企画提案が認められ、選出されました。
本プロジェクトの稼働にあたり、酒田市と西松建設は事業目的会社「光の湊株式会社」を設立。同社が事業施行者(=発注者)として事業を推進しています。2020年11月には先行して一部の施設が開業。2022年のグランドオープン時には、約1haの敷地に図書館などの公共施設、会合や婚礼も可能なバンケット、コミュニティホテル、マンション、立体駐車場、商業施設などで構成される3棟の複合施設が誕生する予定です。同時にイベント広場やバスベイなど、交通結節点や人々が集う賑わい空間の整備も進めています。

PROFILE

 

開発・不動産事業本部
開発事業第三部
事業開発一課 課長

平澤 資尊

Mototaka Hirasawa

入社25年目。これまで数々の再開発・整備事業を手掛け、本プロジェクトにはプロポーザルに参加する計画段階から関わっているプロジェクトの統括責任者。

 

開発・不動産事業本部
開発事業第三部
事業開発一課 主任

渡部 智也

Tomoya Watanabe

現場事務から、「開発がやりたい!」と志願し再開発事業部門へ異動して9年目。本プロジェクトの実務担当であり、事業目的会社設立後から酒田市に常駐し5年目。

 

開発・不動産事業本部
開発事業第三部
事業開発一課

丸山 貴大

Takahiro Maruyama

ゼネコンの再開発事業に興味があり、西松建設に入社。1年目は本社勤務で、開発案件の企画書づくりをメインに担当。2年目の現在、実務を勉強中。開発職採用。

※インタビュー時の所属です。

TALK - 01このプロジェクトの社会的な
意義とは?

平 澤

この案件は酒田市で過去に2回計画が頓挫していた駅前再開発事業です。私たちの計画は華美でも斬新でもありません。しかし、駅前がなぜ衰退していったのか、真のニーズは何かをふまえ、将来にわたる事業の継続性を重視した実現性の高さが評価されたのだと思います。開発事業は建物が竣工した後の、“まちづくり”こそが本当のスタートです。専任担当者(渡部)は出張ではなく現地に常駐して地域の皆さんと共に事業を推進しており、その姿勢に対する信頼も大きかったと思います。

渡 部

よくコンパクトシティという言葉を耳にしますが、日本は人口減少が間違いなく進んでいくなか、都市機能を中心市街地に集約して効率的に社会活動を行っていくことが、現在の地方都市には求められています。酒田市も人口10万人ほどの典型的な地方都市。駅前地区の空洞化は都市の玄関口には相応しくない状態でした。おそらく本プロジェクトは、市の中心市街地へヒト・モノ・コトを再び呼び集め、活性化する重要な足掛かりになるものと自負しています。

丸 山

私も赴任後は酒田市の人たちと触れ合い、一住民として暮らし、地元愛を育んできました。酒田市は伝統工芸品が多く、図書館の備品などでも、伝統工芸品を用いて地域色を出していこうと趣向を凝らしています。まちづくりに地域文化を絡めた広がりのある取り組みとして、活性化に貢献していきたいです。酒田市駅前の再建を通じて、これからの地方都市における地域観光と地元コミュニティの在り方を示すような良い事例になればいいと思っています。

TALK - 02プロジェクトで携わっている
役割とは?

平 澤

私たちは全員「光の湊株式会社」の所属となりますが、私は事業全体をコーディネートする統括責任者です。本件は法定再開発事業のなかでも特殊な「個人施行」という手法で、当社が発注者である「事業施行者」の役割を担います。通常の特定業務代行者よりも責任ある立場で、地権者の方々全員の同意を得て貴重な資産をお預かりし、付加価値をつけてお返しするのが使命です。個人施行の事業参画例はまだ数少なく、社内の先行事例としても大きな意味があります。

渡 部

事業者選定後はまず、土地建物所有者、借家権者、抵当権者の方々30名以上との補償交渉から始まり、施設計画と並行しながら着工まで2年半がかりで準備を進めました。反対されても根気強く距離を縮め、会って話して、信頼関係を築くことが何よりも大切でした。大きな事業ですので、一人で問題解決することは不可能。まずは自分が責任者だという意識を強く持って取り組んだことにより、関係者の協力や信頼も得られるようになっていったと思います。

丸 山

私は赴任してまだ半年程度です。渡部主任と行動を共にしながら、事務所の会計、事業推進業務・発注業務の補助業務を担当しています。事業は想像以上にスピーディに進行しています。私もスケジュール管理を徹底しておかないと、悩んでいる時間さえないような状況です。考えながら手も足も動かし、事務作業は効率的にこなし、できるだけ直接関係者と協議する時間をとるよう心がけています。現在は先に竣工するA棟の式典やイベントの準備も進めているところです。

TALK - 03プロジェクトを通して
得られた経験・成長とは?

平 澤

建設業は基本的には「請負」です。しかし、今回は発注側に立つことで、発注者の考え方、進め方を学び、「顧客目線」を身につける良い機会になっています。顧客ニーズを掴めば、将来、「負けない交渉」に役立ちます。また、本案件は連携協力する関係者が非常に多く、その方々の意見調整が私の一番の使命です。何より重要なのは、実際に会って話をすること。そして交渉事を成立させるには私の「人間力」そのものが問われ、鍛えられたと思います。

渡 部

プロジェクトでキーとなったのが、地元民間企業が取得運営するホテルの事業計画でした。その資金計画や投資回収計画、銀行との融資協議についても全面的に支援を行い、私自身もゼロからホテル事業を学びました。事業者の社長からも銀行担当者からも頼りにされた時は嬉しかったですね。事業の進捗は地元紙にも頻繁に取り上げられ、地元の大学生がロゴマークを考案してくれたり、市の広報紙に事業のナビゲータとして私が登場したり。都心ではあり得ない注目度に、地域の期待を感じました。

丸 山

赴任後すぐ最後の借家人の方を担当し、「ちゃんと話を聞いてくれて信頼できた」と交渉をスムーズに進められたことはとても印象に残っています。渡部主任にお褒めの連絡が入ったのですが、関係者の方々がどれだけ相手の人間性を見ているのかがよくわかりました。課題や問題に直面した際はとくに、関係者から頼られる関係づくりが重要であることを実感しました。今は徐々に渡部主任から任される業務が増えており、自分なりに成長を感じているところです。

TALK - 04プロジェクトで求められた
「現場力」とは?

平 澤

開発の担当者に必要なのは「顧客目線」「人間力」です。事業は全体スケジュールをベースに年度、3カ月、週ごとに目標を設定し、それぞれの期日までに課題を解決して目標を達成するという考え方で進めます。多くの関係者の間で私たちが潤滑油となり、一人ひとりが自分の役割に当事者意識を持ちながら予定通り推進していけるよう全体をマネジメントする。この流れを作っていくことがまさに「現場力」だと思います。

渡 部

事業関係者をワンチームにすることが私の役目であり、事業成功の鍵です。最近、水道管トラブルが発生し、市役所の担当課や施工を担う西松建設の社員や設計事務所などに掛け合いましたが、困った時にすぐに協力してもらえる仲間ほど貴重な存在はありません。課題があれば、所属や職種も関係なく、プロジェクトチームの皆で協力しながら解決することを求められますが、その中心でチームを動かし、気持ちを一つにしていくことが私に求められる「現場力」だと感じています。

丸 山

私は受注後の実務は全く初めての経験で、まさに「これが現場か」と実感しているところです。現場で地権者・関係者の側に居ると、紙の企画書で見ていた世界とは全く別物という印象を受けました。発注ミスなど、私が失敗したらすぐトラブルに直結する緊張感や責任もあります。関係者の声に耳を傾け、迅速に対応することを心がけ、皆の合意形成ができて「これでいきましょう」とゴーサインが出た時は達成感がありますね。

TALK - 05この経験を活かし、
今後、経験したい現場とは?

平 澤

首都圏に比べ、人口も少なく経済的にも余裕のない地方都市の再開発は、事業者目線で見ればなかなか採算が合わず難しい事業です。しかし今、日本でもテレワークが進み、地方居住の推進や東京の一極集中が見直される時期にあり、地方の時代への追い風になると期待しています。とくに私は仙台に自宅があり、東日本大震災による現地の惨状は目に焼き付いています。東北の復興支援はライフワークであると同時に、地方を元気にしたい気持ちはこの先も変わりません。

渡 部

私は市街地再開発事業を2件経験し、ようやく事業の全体的なノウハウが身につき、対外的にも自信を持てるスキルを身に付けたと思っています。地方都市での再開発事業は、地域社会へのインパクトが非常に大きく、その責任も痛感していますが、大都市の事業にはない地域貢献がまさに醍醐味です。今後は、ポストコロナの新しい生活様式や働き方改革の進展をヒントに、地方都市における市街地再開発事業が仕掛けられたら面白いですね。

丸 山

自分自身が地方出身ということもあるのですが、酒田にいて地場の価値あるものを地方創生に活かすプロジェクトができ、地方都市にもまだまだ可能性はあるという気持ちになりました。大規模プロジェクトも魅力的ですが、西松建設には大きさに関わらずさまざまな案件があります。次は全体像を把握できる中規模の不動産開発のような案件を、土地の仕入れ段階から手掛けるなど、幅広く開発案件を経験し自信にしていきたいです。