Project 02

難関は「経験」と「柔軟性」で乗り越える

学校法人常翔学園
梅田キャンパス(仮称)新築工事

背景

誰もが注目する大阪・梅田という立地。たくさんの同業者が悩まされてきた軟弱な地盤。
様々な要素が絡み合い、施工の難易度は上がる。
都心部での大学キャンパス工事には、「施工のプロ」のプライドがあふれていた。

工事概要
工事名称

学校法人常翔学園 梅田キャンパス(仮称)新築工事

工事場所

大阪市茶屋町地区土地区画整理事業
街区番号1画地番号[3]・[4]

建築主

学校法人常翔学園

設計・監理

服部・石本・安井設計監理共同企業体

施工

西松建設株式会社 関西支店

建築用途

学校(大学)

建築概要

敷地面積4,650.47㎡、最高高さ125.10m
構造S+SRC造、建築面積2,416.21㎡、延床面積33,240.24㎡

建物階数

地下2階地上22階PH1階

工期

平成25年9月30日~平成28年10月31日

大阪・梅田という都心部に、
「新時代の大学キャンパス」を建てる。

JR大阪駅のほど近く、鉄道各線や商業施設の密集地帯に、地上22階・地下2階建てのタワー型大学キャンパスを建設しています。施主は、学校法人常翔学園。法人の100周年記念事業の一環ということもあり、デザインや設備における設計側のこだわりが随所にちりばめられ、施工する西松建設にとっても技術力が試されるプロジェクトのひとつです。施設内には、大阪工業大学、講義室、多目的ホール(収容約600人)やレストランなどが併設され、「産・官・学・民」が集う都市空間としての活用が目指されています。また、国土交通省が策定した「平成25年度住宅・建築物省CO2先導事業」に採択されたり、民間の建物としては日本初の「低炭素建築物新築等計画」認定を受けるなど、様々な方面から多くの注目を集める本プロジェクト。たくさんの方の思いや期待に応えるために、現場には今日もきめ細やかな施工管理力へとつながる緊張感があふれています。

現場に潜む課題を、いかに解決していくか。
「地下」との戦いには、
たくさんの経験値が集約されている。

本プロジェクトには様々な難所がありますが、中でも一番の難所は「地下」です。梅田界隈は水分を多く含んだ地盤の弱いエリアであるため、昔から建設工事中のトラブルをよく耳にしてきました。そのため地下は、工事にあたる前からかなり慎重に取り組んできました。支持地盤に到達するまでに軟弱な地盤が続いているので、途中で土が崩れたり、水が出ないようにするには、どんな対策が必要で、どんな手法が有効なのか。「この梅田での現場経験がある人、似たような地盤の弱い現場経験が豊富な業者さんなど、社外にもたくさん話を聞きました。当然、西松建設内にもあらゆる経験のストックがありますから、全国から経験者の意見を集めて。かなり時間をかけて検討しましたね。本社の人、現場の人、みんなが一緒になって取り組んだからこそ、難しい土地だけれどこうしてやれている」と中筋所長は語ります。それゆえの施工特徴として、「コスト削減のためにギリギリのラインを追求するのではなく、徹底的に安全優先。そこに西松建設としての違いが出せた」とこぶしを握るその姿には、どれほど地下対策に力を入れてきたのかという事実が物語られていました。「地上の施工は、流れを想像しながら進めることができる。でも地下は、掘ってみなければわからない。計算上は成り立っていても、工事を進めれば実際どうなってくるか。細かに管理しながらやってきたけれど、ここからは竣工に向けてのチェックが重要」と、最後まで油断を許しません。

工期短縮のため逆打工法にて地上と地下の工事を同時に進めているということもあり、地下工事には工事中の構造安定性もかかっています。高さと地下のバランスを取りながら、地盤の特性にも神経を注ぐ。華々しい高層タワーキャンパス建設は、私たちの目に見えない地下との戦いに支えられているのです。

お客様目線の施工とは何か。
「建物はいつもオリジナル。現場ごとに、知恵をふりしぼれ!」

「発注者に安心と満足を与えられるものを」というスローガンのもと、技術者のプライドを持って施工にあたっています。大阪駅からすぐ、JR各線の高架に近接した現場であるため、工事によって万が一列車の運行を妨げてしまうようなことがあれば、関西一円・大勢の人に影響を及ぼしてしまいます。「列車の安全が最優先。JRとも協議を重ねて、基礎工事の際には監視員を場内、軌道上、大阪駅ホームに常時配置。列車が来るたびにクレーンを止めて」。もちろん、現場周辺の通行車両や歩行者への配慮も欠かせないため、毎日気を引き締めて安全管理を続けています。

お客様の想いに応えるポイントはこうした安全面だけでなく、「デザイン性を実現すること」にもあります。常翔学園の100周年記念事業ということもあり、様々な設備を取り入れながらデザインにも個性を発揮する設計となっている常翔学園梅田キャンパス(仮称)。建物は面ごとにデザインが異なっており、四面の施工を同時に進めることができません。「特に北面は、最上階から吊り下げるガラスカーテンウォールを採用しているため、他の面のように下層階から順にガラスをはめられない。それでも効率良く施工が進むように、それぞれの業者さんとしっかり打合せして、関係者全員でスケジュールを調整。イレギュラーなことでもお客様の要望通りに仕上げていくには、そういう連携が結局は一番大事なんですよ。デザインを優先すれば、施工の難易度は上がる。それに建物はすべてオリジナル。どれだけ経験しても、何ひとつ同じものなんてない。みんなが知恵を出して、コスト管理もしながら、工期通りに要望をかなえる。デザイン性を実現するには、私たち施工者にいろいろな技術と工夫が必要なんです」と中筋所長。お客様目線での追求と、柔軟な対応力が、お客様の安心と満足に繋がっていくと信じています。

一人ひとりのプロ意識を引き出すことで、
きめ細やかな施工管理力を発揮。

世間からの注目も集め、立地や施工そのものにも難しさが複雑に絡みあう本プロジェクト。施工のプロとしての目を光らせ、関係者全員で連携し、様々な検証を重ねながら形にしていく中で、所長が最も重要だと考えるのは「一人ひとりのプロ意識」だと言います。「どんなに組織の長が号令をかけたとしても、やる気のない人の集まりにはコミュニケーションなんて生まれません。でも、一人ひとりにプロとしてのこだわりがあって、やる気があれば、自然とチームとしてまとまっていく。この現場では、毎日300~400人が業務に励み、作業に応じて毎日新規の入場者が加わってきます。このプロジェクトに関わるすべての人にこだわりとやる気を持って臨んでほしいので、新規入場者への現場説明には力を入れています。これまでで総勢2,800名ほどになりますが、一人も漏らさず顔を合わせてきました。全員を把握して、初日にきちんと言うべきことを言う。それが私のこだわりですね。いい現場をつくるには、一人ひとりが大切。それこそがチームづくりのすべてだと思うから」と。

そしてこの現場は、西松建設が大阪府で初めて「なでしこ工事チーム」(日本建設業連合会により創設、平成28年1月より「けんせつ小町工事チーム」に名称変更)に認定された、女性技術者が活躍する現場でもあります。キーとなるあの地下現場でも、女性技術者が力を発揮しています。一人ひとりがプロとしてのこだわりを持ち、自らの専門と技術を活かしあってこそ、きめ細やかな施工管理ができる。竣工までのラストスパート、熱を帯びた「プロ意識」の融合が、たくさんの人が待ち望むキャンパスを完成させていきます。

OTHER PROJECT