Project 10

木の温もりを最大限に活かすために、
国内初の施工に挑む

平取町国民健康保険病院改築工事

背景

面積の85%を森林が占める北海道平取町。
この町で老朽化した国民健康保険病院の機能充実と経営安定化に向けた改築工事を当社が担当しました。
木の温もり癒し効果による良質な療養環境の創造と病院経営の安定化。
その二つを両立させるのが、国内で初めて採用されるRC造の躯体と木構造材を一体施工するハイブリッド構造。
前例のない施工方法に試行錯誤しながら、2018年冬に完成し、2019年7月1日にオープンしました。

工事概要
北日本支社 札幌支店 平取建築作業所
所在地

北海道沙流郡平取町本町67番地1

発注者

平取町

設計者

株式会社石本建築事務所

工期

2017年9月15日~2019年1月31日

用途

病院

敷地面積

6384.39㎡

構造

本館:RC造+木造ハイブリット構造地上2階
別館:RC造地上2階

“国内初”木構造とRC造の一体施工

北海道の中央南西部、南北に連なる日高山脈と日高山脈にほぼ並行して走る海岸線に挟まれた日高地域。その西端位置する平取町は、面積の85%をカラマツを中心とする森林が占め、農林業を基幹産業として発展してきました。
「平取町国民健康保険病院改築工事」は、1963年に建設され、築後50年以上が経過する既存病院を、機能充実と経営安定を目的に、平取町本町の現在地南側に移転改築するもの。新病院はいずれも2階建ての本館棟と別館棟を渡り廊下でつなぐ構造で、延べ床面積は3,549㎡の規模で計画されました。
計画にあたっては、高齢者や長期入院の患者が多い病院の特徴を踏まえ、木材生産地らしく、木の癒し効果による患者の療養環境と居住性の向上を図るため、木材の多用による木の温もりと美しさを感じられる空間づくりが一つのコンセプト。
一方で病院経営の安定化もプロジェクトの重要なテーマの一つ。そこで可能な限りコストを抑えながら施設の木質化を図るため、本館の躯体構造は全体の50%以上を木構造とし、RC造とのハイブリット構造を採用。長期荷重を木造の梁部分に、水平力をRC造の躯体部分に負担させ、RC造を最適に用いることで躯体の低コスト化を実現しました。
この工事の特徴は、現場を指揮した伊藤博明作業所長が「前例がなく、手探り状態で慎重に進めている」と話す、国内初の木構造とRC造の一体施工。通常、木構造とRC造の混構造では、異構造の施工ステップが複雑になるため、RC造部分を構築してから木造部分をあと施工するのが一般的。
しかし、今回の工事では、RC柱と大断面集成梁との接合方法に、ボルトなどの接合具を接着剤を用いて木材に内蔵させるグルー・インロッド(GIR)工法が採用され、RC造部分と木造部分の同時施工を実施しました。

伊藤博明作業所長

同時施工により、施工の生産性向上が図られるなどメリットもあるが、課題もあります。「いかに傷や汚れを発生させずに構造としての強度を担保させるか」(伊藤作業所長)もその一つ。
その対策として現場では、RC部材と木構造材の取り合い部の実験モデルを作成。スラブコンクリート打設時や床埋め込み部のグラウト施工時の浸込みなどによる汚損防止策の検証を行いました。

RC部材と木構造材の取り合い部の実験モデル

西松建設も協力業者も職員も経験のない工事。確立した施工方法がない中で円滑な施工には事前の綿密な計画立案が欠かせない。協力業者との打ち合わせを増やしているが「協力業者の方々からも『足場はこうしたら良いんじゃないか』『こんな物を用意したら良いんじゃないか』と意見をもらい皆で計画を考えていった」と伊藤作業所長は振り返ります。
木の温もりを感じる新しい平取町国民健康保険病院。前例のない工事にも果敢に取り組む西松の『現場力』が北の大地にも根付いています。

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