Project 03

地域とともに「悲願のダム」を

河内川ダム建設工事(本体工事)

背景

「河内川ダム」の建設事業が採択されたのは1987年のこと。しかし、工事着手は2012年。
治水の安定、地域経済の活性化のために、30年近くも待ち続けてきた地元の人々。
「みんなが待っている」その想いを胸に、悲願のダム建設は進み続ける。

工事概要
西松建設・竹中土木・キハラコーポレーション・長﨑組河内川ダム建設工事(本体工事)特定建設工事共同企業体
工事名称

河内川ダム建設工事

目的

洪水調節、流水の正常な機能の維持、特定かんがい用水、水道用水、工業用水

総事業費

415億円(国、福井県、小浜市、若狭町で分担)

所在地

福井県三方上中郡若狭町熊川

発注者

福井県

工期

平成24年12月18日~平成31年5月31日

構造・規模等

重力式コンクリートダム
基礎掘削工202,850㎡(土石掘削176,100㎡、岩石掘削26,750㎡)
堤体工257,200㎡(本体251,740㎡、減勢工5,460㎡)
基礎処理工1式(コンソリ251,740㎡、カーテン30,868㎡)
閉塞工1式(調査横坑、堤内仮排水路、堤外仮排水路、発電導水路)
濁水処理工1式
諸工事1式
仮設備工1式

主要材料

セメント50,000t
コンクリート骨材540,000t

30年待ち続けた地域の人々のために…。
福井を救うダム建設。

福井県と滋賀県の県境をまたぐ駒ヶ岳(標高780m)を源に、福井県若狭町を経て北川へ合流する6.4kmの一級河川・河内川。この北川水系では、昔から台風や豪雨などにより幾度も水害に見舞われてきました。その一方で、夏季には異常渇水が起こり、上水道が断水して取水制限が実施されるなど、水に悩まされてきた地域の人々。洪水対策と、安定水源の確保は、ダム建設の現場である熊川地区だけでなく福井県としての重要課題です。この複合的な課題の解決のために、多目的ダム「河内ダム」の事業が採択されたのですが、様々な要因により工事は進まず…。2012年12月、ようやくダム本体工事の着手が実現したのでした。

コンクリート打設の完了目標は2017年11月。寒さの厳しいこの地では、冬場は積雪によりコンクリートの打設ができないため、その他の工事を進めながら全体のスケジュールの底上げを図っています。ダム高77.5m、堤頂長202.3mの壮大な姿が見られるのはまだもう少し先になりますが、ほぼ計画通りに進行しているとのこと。30年近くも待ち続けていた地域の方々の想いを乗せ、2019年5月のダム本体工事の完成に向けて歩みは止まりません。「地域と一緒になったダム工事」を合言葉に、団結力を増す出張所のメンバーたち。「みんなが待っている」という気持ちが励みとなり、様々な課題を乗り越える力になっているのです。

地域の方々の期待を感じて。
ダム建設のテーマは、
地域経済の活性化にまで広がっていく。

工事着手にあたり、福井県による地元(熊川地区では、河内区・熊川区・新道区・若王子区の4地区)への説明会が開催されました。「地元の方々はもちろん、福井県や若狭町のこのダムへの期待が、これほどまでに大きいことを肌で感じました」と奥田所長は言います。河内川ダムが、熊川宿と合わせた観光資源として地域経済の活性化をもたらすだろうという期待も寄せられているのです。事業の早期完成、ダムの品質等はもちろん、地域経済を潤すダムを造るということも、本プロジェクトの重要なテーマとなったのでした。

最盛期に入り、コンクリートの骨材を運搬するダンプトラックが1日に100台ほど出入りするように。ドライバーに配慮意識を浸透させつつ、地元への事前告知を行うなど、常に注意を払っています。また、この地に生息するクマタカの生育に影響を与えないよう、生活サイクル(造巣期や求愛期など)に気を配ることも欠かせません。地元の方々だけでなく、自然に生きる動物たちにもできる限りの注意を傾ける。ダムを造ることは、この地の未来を明るくするためにあるのだから。まだまだ工事のピークはこれからです。地域とともに、みんなの未来のための一歩を重ねています。

「きめ細やかな施工管理を行うには、
近隣の方との良好な関係を構築することが大切。
でもそれ以上に、私たちは『熊川の一員』として、
ともにダムを造っています。」

事業採択から30年でようやく工事が始まったということもあって、その間に地元の高齢化も進み、「自分たちが生きているうちにダムは完成するのだろうか」という不安の声も聞こえてきたそうです。そうした地元の方々の想いに触れ、「出張所一同、スケジュールを確実に守り、立派なダムを造り上げるぞという思いが強まったと同時に、工事に携わる自分たちはもうこの熊川の一員なんだという意識が自然と芽生えてきました」と、出張所にはあたたかな活気が満ちあふれていました。

「熊川の一員である」という意識の芽生えによって、地域コミュニティへの積極的な参加は彼らの日常の一部となりました。若狭町や熊川宿では、年間を通じて様々な行事が催されています。観光客を呼び込むイベントや、地域で大切に受け継がれてきた催事など、その数の多さには驚かされます。地元への工事説明会や現場見学会というオフィシャルな交流はもちろん、若狭町主催のイベントへの出演(ヒーローショーでの悪役パフォーマンス)や、ブース出展(子どもたちに綿菓子を配布)、運動会での競技出場、神社への門松奉納、蛍観賞会への協力…。すっかり地元に溶け込んでいます。「私たちは縁があってこの地で仕事をさせていただくことになりました。工事をしっかりと終えることはもちろんですが、この地で生活する機会を得たのだから、熊川の一員として、様々なことに触れたいと心から思っています。この地での経験は、職員全員にとってかけがえのないものになるでしょう」。奥田所長をはじめ、職員みんなの表情はとても明るい。地域コミュニティへの参加は、出張所内のコミュニケーションも促し、工事を安全かつスムーズに進める力にもなっているそうです。「素晴らしいダムを造る」というミッションに向かいながら、地域の一員としてあたりまえのことをする。それが「地域と一緒になったダム工事」ということなのです。

地域の活性化は、もう始まっている。
地元の悲願を、もっと多くの笑顔にかえよう。

宿場町として歴史を刻んできたため、熊川宿は「外」に開かれた町。歴史的な街並みだけでなく、熊川の人々のあたたかさが、多くの観光客を呼び寄せています。熊川公民館長の明智さん、熊川地区地域づくり協議会会長の藤本さんなどを中心に、街並みの保存や、行事の開催など、人々が力を合わせてこの町をつくってきました。藤本さんは「過去には水害で若い命を失ったこともあり、ダムは本当に地元の悲願なんです。工事がようやく軌道に乗ってきてよかった」とほっとした表情を見せますが、河内川ダムの完成はこの町にとっては「ひとつの通過点」にすぎません。熊川でも少子高齢化は大きな課題であり、経済を活性化させて若者に生活地として選ばれる街にすることは、今後の重要なテーマ。河内川ダムの完成は、安全で活気あふれる街づくりのために欠かせない存在として待ち望まれているのです。

「ここに住む人々がいきいきとすることが一番大切。たくさんの行事を通じて地域を盛り上げたいという思いで、様々な案を練っている」という明智さん。「出張所が開設され、奥田所長をはじめとした職員のみなさんが参加されるようになってからは、さらに行事がにぎやかになりました。忙しい中でもいろいろなお願いに応えてくれています。これからも一緒に、熊川を活性化していきたいですね」と地域づくりのパートナーとして出張所一同に期待を寄せています。河内川ダム建設の推進力は、こうした地域との一体感にほかならないのかもしれません。

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