Project #4地域環境ソリューション事業

再生可能エネルギーで社会と地域に貢献する、
2つの環境ソリューションプロジェクト。

INTRODUCTION 地域環境ソリューション事業とは?

地域環境ソリューション事業は、再生可能エネルギー事業・まちづくり事業を足掛かりとして、都市・地域の密着を図り、
課題解決策の提案・実施を通じて、さらなる事業を共創することをめざしています。

Example 01

熊本県阿蘇郡
わいたグリーンエナジー地熱発電所

PROJECT OUTLINE

世界有数の火山大国である日本は、アメリカ、インドネシアに次いで世界第3位の地熱発電のポテンシャルがあるといわれています。地熱発電は、再生可能エネルギーの中でも、天候・季節・時間等などによる発電量の変動が少なく、一年を通じて安定的な発電が可能なベースロード発電。西松建設はこの地熱発電を核として、地域社会を構成する様々なステークホルダーと共存していくことをめざし、地熱発電の開発・運営を検討してきました。その地熱発電第1号案件として、熊本県阿蘇郡小国町にて、有限会社石松農園様が所有していた「温泉バイナリー発電所」を2022年12月に事業継承し、わいたグリーンエナジー地熱発電所として運営を開始しました。温泉バイナリー発電とは、温泉からの熱水および蒸気で、水より沸点が低い媒体と熱交換して蒸発させ、その蒸気でタービンを回す発電方式であり、自噴する温泉において期待されている発電方式です。運営を開始した地熱発電所は、定格出力49kW、年間想定発電量は約77世帯分の年間消費量に相当する31万2000kWh。今後、長期にわたって地元に根付いた発電所を運営していく中で、発電事業だけでなく、発電事業から出た余剰熱や余剰温水を地域に還元することで、地域のさらなる発展に貢献するなど、地域社会との共存・共生を図り、持続可能な循環社会の構築をめざします。また今回の取り組みは、地熱発電所の開発・運営のノウハウを取得するとともに、さらなる地熱発電開発事業の推進を図るためのパイロット事業と位置付けています。

PROFILE

土木職
地域環境ソリューション事業本部
事業創生部 再エネ1課 課長
坂東 龍 Toru Bando

入社21年目。土木職として入社後、10年以上にわたって高速道路や鉄道などの施工管理に携わってきた。2016年から経営企画部で4年勤務。2021年、「新しい事業に取り組みたい」という思いから異動を希望、以来現職。

事務職
地域環境ソリューション事業本部
地域創生部 官民連携課 主任
坂口 大樹 Daiki Sakaguchi

入社9年目。入社後、西日本支社総務部を経て、建設現場事務を4年間担当。2020年、「案件形成から運営管理まで一貫して携わる事業に取り組みたい」という思いから、異動を希望し、移動後にコンサルティングファームへ2年間出向を経て現職。

※インタビュー時の所属です。

TALK - 01プロジェクトで
携わっている役割とは?

坂 東

今回のプロジェクトで、私と坂口君は明確に役割が分かれています。端的に言えば、私は地熱発電のプロジェクトの立ち上げ、坂口君は発電所事業継承後の運営管理を担当しています。だから現在は坂口君がプロジェクトの主体ということになりますね。

坂 口

ええ、私は石松農園様から事業承継する数か月前にプロジェクトに参加しました。事業承継までを坂東さんが取り組んだわけですが、その経緯を教えてください。

坂 東

プロジェクトの発掘から始まりました。国内の地熱発電の有望地は九州、東北、北海道エリア。その中で、熊本県阿蘇郡の石松農園様が、自社保有の地熱発電所を売却したいという情報をキャッチしたのです。発電所自体は小規模なものでしたが、将来を見据え、次の地熱発電案件に繋げるステップとして、事業承継の検討を進めました。

坂 口

その頃、私がプロジェクトに参加し、事業承継に伴う契約や、電力の固定価格買取制度である「FIT」の権利変更、送配電の契約変更など、関係各所との手続きを担当しました。

坂 東

そして2022年12月に事業継承し、当社の運営が始まりましたが、地熱発電の知見・ノウハウがない中、現場で坂口君が日常管理に奮闘してくれています。実際、現場ではどのようなことが求められているのですか。

坂 口

意識していることは発電所の高効率かつ安定稼働を実現することです。温泉熱を活用する発電所運営のノウハウは、石松農園の石松社長の頭の中にありますから、ヒアリングを重ねる中でノウハウをマニュアル化していきました。また日常管理は自然との闘いです。大雨で源泉の温度が下がると、発電機保全の観点から発電機を事前に止めることもあります。そうした自然との闘いの中で高効率かつ安定稼働を実現しなければならない。日々学びや気づきをもって、安定稼働に取り組んでいます。

TALK - 02プロジェクトで求められた
「現場力」とは?

坂 東

私はかつて土木現場の施工管理を担当してきましたが、同じ現場は一つとしてありません。高速道路と鉄道では、求められる知識もノウハウも異なってきます。今回の地熱分野は初めてのプロジェクトですが、土木現場との共通点もありました。それは初めての取り組みに対し、専門家をはじめ、いろいろな人の力を借り、知恵を絞って前へ進んでいくということです。

坂 口

同感ですね。発電所の運営でも、たとえば配管などの設備関係がどの程度で修繕を必要とするかなど、事業計画を立てるのは一苦労します。専門家に相談しつつ、社内の関係者と議論しながら進めています。契約関係を整理する段階から運営している現在まで、様々な関係者の力を借りて、今日まで安定した稼働が続けられています。社外パートナーとの重要性を実感するプロジェクトですね。

坂 東

社内のみならず、協力会社や専門家、地域の方々等々、いろいろな人を巻き込んで一緒に作り上げていくのが、西松建設の現場力だと思います。それが、今回のプロジェクトでも発揮されていると思いますね。

坂 口

石松農園の石松社長から、当社が「今後地熱発電を行うにあたってノウハウを得たい、また地域とも良好な関係を築いていくという想いが一番伝わってきた、西松なら任せて安心」というお話を伺いました。坂東さんをはじめ、当初石松社長と接触した当社の社員の対応が高く評価されたのだと思います。現地で考えて対応する人間力が当社の現場力の一つだと思いますね。

坂 東

その現場力は、人と良好な関係性を築いていく力ともいえると思います。その関係性をべースに信頼関係を醸成していく姿勢は、西松建設のDNAだと思いますね。

TALK - 03このプロジェクトの社会的な意義と、
実現したい未来とは?

坂 口

本発電所は、それまで捨てられていた、温泉の熱水や蒸気を活用してエネルギーを生み出す発電方式であり、日本は温泉地域が多いことから、将来的に技術開発が進めば全国各地で実施可能な発電方式になっていくと思います。

坂 東

そうですね。ポイントは再生可能エネルギーであると同時に、地域で得られたエネルギーを循環する仕組みである点だと思います。今回は小規模なビジネスモデルですが、地方創生、脱炭素社会社会の実現に繋がっていく、大きな一歩だと思います。

坂 口

確かに、当発電所自体は小さいですが、この発電所運営を継続し地熱発電の知見・ノウハウを蓄積していくことで、火山大国の日本のポテンシャルを活かした地産地消の国産エネルギーに展開する可能性を秘めています。

坂 東

それを実現するのも我々のミッションの一つだと思いますね。この発電所はパイロットプラントという位置付けですから、ここで得たノウハウをどのように横展開していけるか、それも当事業部のテーマの一つだと考えています。坂口君の今後の目標や挑戦したいことは何ですか。

坂 口

私が現在所属する部署は官民連携課で、行政・地元・パートナーとの連携により地域課題の解決を図っていく役割を担っています。発電所を運営していく中で、発電所を良くしたいという関係者の方々の熱い想いを日々感じています。このような熱量を持った地域の方々と連携して、みんなで育てるプロジェクトを開発していきたいですね。

坂 東

私は現在、バイオマスやバイオガスの再生可能エネルギー開発を担当しています。プロジェクトの発掘・推進のためにはパートナーを見出すことが重要です。今回のプロジェクト同様、多くの人との関係づくりを進め、巻き込みながら、地方創生や脱炭素社会に貢献するプロジェクトに携わっていきたいと考えています。

Example 02

山口県山陽小野田市
バイオマス発電
プロジェクト

PROJECT OUTLINE

西松建設は現在、地域に賦存している未利用の木材を活用した木質バイオマス発電の取り組みを推進しています。木質バイオマス発電の燃料となる木は、成長段階で光合成によりCO2を吸収し、幹や葉として固定化します。この木を燃焼すると固定されていたCO2が再び空気中に出ていきますが、この吸収と排出によるCO2の合計がゼロになるため、大気中のCO2を増やさない、いわゆる「カーボンニュートラル」を実現する再生可能エネルギーとして、バイオマス発電は注目されています。西松建設は様々な再生可能エネルギー事業を検討する中で、これまで太陽光発電と地熱発電を稼働させていますが、今回のバイオマス発電プロジェクトは再生可能エネルギー第3弾目の事業。2021年夏から実現可能性の検討を開始し、最終的に山口県山陽小野田市にて用地を取得、2023年6月、バイオマス発電所の建設が始まりました。発電所が稼働を開始すると、西松建設として掲げて取り組んでいるCO2排出削減に寄与するとともに、電力販売を通じて新たな収益源を確保することになります。また、地域の人々には、社員としての雇用という直接的な形のみならず、燃料材や、発電所運営に必要なモノやサービスの調達などによって、林業振興をはじめとした地域創生に貢献することもめざしています。現在建設中の発電所は、出力1990kW(約2MW)、年間想定発電量は約1350万kW、一般的な住宅の約5400戸分の消費電力に相当します。発電所の稼働開始は2024年4月を予定しています。

PROFILE

建築施工職
地域環境ソリューション事業本部
事業創生部 再エネ2課
久保田 俊平 Shunpei Kubota

入社20年目。入社してからは、組合への出向や建築事業本部での経験も積みつつ、建築の施工管理の仕事を中心に携わってきた。3年前、今後のキャリアを考え、「新しいことにチャレンジして成長したい」と考え、現部署の前身である「環境・エネルギー事業統括部」に異動した。

事務職
地域環境ソリューション事業本部
事業創生部 再エネ1課
堀井 幸太 Kota Horii

入社3年目。エネルギー業界のコンサル系の仕事に就いていたが、「次世代の役に立つ仕事をしたい」という思いに、「結果をよりダイレクトに感じられる事業者の立場で」という思いが加わり、再生可能エネルギーに注力している西松建設への転職を決意した。入社以来、現職。

※インタビュー時の所属です。

TALK - 01プロジェクトで
携わっている役割とは?

堀 井

私は、再エネ発電を立ち上げたいという思いを持って入社しました。入社直後から本プロジェクトに参加し、発電サイトも含めた実現可能性の検討を進めるメンバーにアサインされました。様々な情報を精査する中で、山口県山陽小野田市の用地が有望な候補地として浮上したのです。

久保田

その段階では、まだ私はプロジェクトに参加していなかったのですが、堀井さんはプロジェクト初期でどのような役割を担っていたのですか。

堀 井

少人数で検討を始めたため、幅広い業務に携わりました。たとえば、燃料となる間伐材・未利用材が地域にどれだけあるか、その賦存量を専門機関と調査し、事業継続性を評価しました。また様々なリスクシナリオを考慮した事業収支の算出、本事業を担う子会社立ち上げに際し出資を検討してくれる企業や、融資を検討してくれる銀行に対する事業概要のプレゼン、事業用地取得のための契約なども担当しました。

久保田

そして2022年5月、私は堀井さんからバトンを受けて、プロジェクトの具現化に取り組むことになりました。具体的には、発電所の建設・運営に向けた準備段階業務です。発電所に関わる仕様の決定、電力固定買取制度である「FIT制度」の権利取得、電力会社や諸官庁への申請・届け出、運営体制の構築や必要な資機材の調達など、事業開始に向けて体制を整えていきました。すべてが初めてのこと。知見やノウハウが発展途上の中、社内外の協力を得ながら、新たに触れる事象の一つひとつの意味を確認しながら慎重に進めました。堀井さんの取り組みは、どの辺りがポイントでしたか。

堀 井

担当した業務は幅広いものがありましたが、重要だったのは社内外の関係者と合意形成すること。コンサルタントとしての過去の知見を活かすとともに、実際の調整・交渉にあたっては、粘り強く、意見の異なる関係者の着地点を見出していきました。

TALK - 02プロジェクトで求められた
「現場力」とは?

久保田

プロジェクトを進めていく中で、必要なタスクや懸念されるリスクを積み上げ、メンバーと共有しながら進めていましたが、やはり漏れはあり、対応に苦慮することがしばしばありましたね。しかしその都度、周囲の助けをいただきながら乗り越えてきました。相談できる、多様な人材が西松建設に居ることに、改めて気付くことができました。個人では解決が難しい問題に対して、部署を超えて解決に向けて一緒に考えてくれる人がいること、これが西松建設の大きな現場力だと思いますね。

堀 井

私は中途入社ですが、久保田さんが指摘することは、業務を通じて感じています。様々な課題に対して解決方法を見出す、現場力の根底にある行動規範のようなものは、初期フェーズでも発揮されてきたと思います。たとえば、事業の社内承認をめざす段階においても、初めての事業であるため手探りではありましたが、社内および社外パートナーと連携して課題の発見と解決を繰り返してきました。

久保田

そうですね。課題を解決することでプロジェクトは前進しますが、その駆動力はメンバーや関係者の強い連携だと思います。今回のプロジェクトは「One Team」という印象があります。建設の分野も同様ですが、初めてのチャレンジであり、目標に向かって一丸となって取り組むことができた。これも現場力だと思いますね。

堀 井

同感です。また、プロジェクトを進めていく中では、時間の制約がある中で判断しなければならない場面も多々あります。限られた時間内に最大限の情報を集め、現実的に採り得る選択肢を絞り込み、その中から最良と思われるものを選んでプロジェクトを前に進める。そういった意味での推進力も西松建設が持つ現場力だと思います。発電所が稼働を開始した後も、再生可能エネルギーの安定供給、その継続による地域活性化への貢献において、西松建設の現場力がフルに発揮されると思っています。

TALK - 03このプロジェクトの社会的な意義と、
実現したい未来とは?

久保田

バイオマス発電は再生可能エネルギーの一つですから、GHG(温室効果ガス)の排出量の削減に寄与します。また、地元から未利用材の燃料を調達することで、地域の主要産業である林業の活性化に貢献できると考えています。

堀 井

ええ。加えて、操業のための様々なモノやサービスの調達を通じて地域にプラスの経済効果をもたらし、持続可能な地域社会の創出に貢献することが、本プロジェクトの社会的意義だと思いますね。

久保田

おっしゃる通りで、私たちのビジョンは、環境にやさしいまちづくりに向け、地方自治・企業・住民とサスティナブルな地域環境を創出し、地域とともにWIN-WINとなる仕組みを展開することですから。堀井さんと私は、本プロジェクトの「基礎」を担当しました。2023年6月に発電所は着工され、プロジェクトは「推進」のフェーズに入っており、二人とも現在は新たなプロジェクトに取り組んでいます。堀井さんの現在の取り組みを教えてください。

堀 井

現在担当しているのは、メタン発酵バイオガス発電プロジェクト。この事業化が当面の目標ですね。将来的には、地熱や洋上風力発電など、今後の拡大が期待される再エネ事業や海外での再エネ事業、さらには「次世代の役に立つ」前例のない新しい事業の立ち上げにも挑戦したいと思っています。

久保田

私は現在、小水力発電や地熱発電のプロジェクトを担当する部署に所属しています。これらプロジェクトを進めていく中で、様々なベンチャーと対話させていただく機会が数多くあります。その中には、魅力的な技術やアイデアを持っているベンチャーが少なくありません。そういった人たちと一緒に、新たなイノベーションを生み出す事業を立ち上げてみたい。それによって、あたりまえに安心ができ、活力がわく地域やコミュニティを創出する一助になりたいと思っています。

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