ニュース

信頼性の高い既製コンクリート杭用パイルキャップ工法 「HSSパイルキャップ工法」を開発 ~より大きな地震力に対して設計が可能に~

お知らせ2020年07月10日

当社は、パイルキャップのせん断耐力の信頼性を向上させたHSS(High Shear Strength)パイルキャップ工法を開発しました。本工法は、コンクリートのせん断耐力に加え、パイルキャップ内に配置された鉄筋の耐力や、軸力による摩擦抵抗力を組み合わせることで、パイルキャプの大きさを変えることなく、従来よりも大きなせん断耐力を確保することができます。この効果により、より大きな地震力に対しても設計が可能となります。

■背景
既製コンクリート杭の頭部(杭頭部)をパイルキャップ※1に剛接合する方法には、杭頭定着筋※2で接合する方法や、杭頭部を杭径程度パイルキャップに埋込む方法に加えて、杭頭部をパイルキャップに埋込みつつ杭頭定着筋も併用する方法(以降、併用接合工法)があります。この中で、採用事例の多い併用接合工法のパイルキャップに作用する横方向の力(せん断力)に対する抵抗機構は、実験などであきらかにされていません。そのため、現状は設計者の判断により、杭頭定着筋で接合する方法のパイルキャップのせん断設計式(従来式)などを準用して設計している状況です。

■詳細
HSSパイルキャップ工法(以下、本工法)では、実大の杭材・パイルキャップを用いた構造性能確認実験により、併用接合工法のパイルキャップのせん断力に対する抵抗機構をあきらかにして、設計方法を確立しました。
本工法は、パイルキャップに埋込んだ杭頭部の周囲部分(縁空き部)にU型およびロ型の補強鉄筋を配置します。これらの補強鉄筋が、コンクリート部分と組み合わさってせん断力に抵抗します。また、杭に圧縮の力(圧縮軸力)が作用する場合には、杭頭部とパイルキャップ間の摩擦力がせん断力に抵抗します。これら補強鉄筋や圧縮軸力による摩擦力の効果を設計式に反映することにより、本工法ではパイルキャップの大きさを変えることなく、従来式よりも大きなせん断耐力を確保することが可能となります。それにより、より大きな地震力に対しても設計することが可能となります。

※1 杭材と上部構造を接続する構造部材。
※2 杭頭部に取り付けられ、杭とパイルキャップ間の力の伝達を行う鉄筋。

本工法の設計式によるせん断耐力と、従来式によるせん断耐力を同一のパイルキャップ寸法の場合で比較すると、短期許容時※3の設計条件において、従来式よりも本工法では1.4倍以上大きいせん断耐力を確保することが可能となります。
また、このせん断耐力の算定方法の妥当性について、一般財団法人日本建築総合試験所から、建築技術性能証明(既製コンクリート杭用高せん断耐力パイルキャップ工法 GBRC 性能証明 第20-05号)を取得しました。

※3 建物共用期間中に数度遭遇する地震動に対応する設計。

■今後の展開
西松建設は、抵抗機構が明快で信頼性の高いHSSパイルキャップ工法の適用を積極的に推進し、建築物の安全性の向上に貢献してまいります。

図-1 HSSパイルキャップ工法の概要

図-2 従来式と本工法設計式での比較

写真-1 構造性能確認実験の状況

図-3 性能証明書