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ボーリング孔壁画像から岩盤不連続面を効率的に判別できる画像評価支援システム『N-IESS(エヌイース)※1』を開発 -孔内水の濁りで不鮮明な画像からも岩盤の割れ目を判別-

お知らせ2020年07月03日

当社は、株式会社ボア(宮城県栗原市、社長:佐々木孝幸)、ジーエスアイ株式会社(茨城県水戸市、社長:豊田守)、東京理科大学(理工学部、小島尚人教授)の協力のもと、ダム現場等における地盤調査で用いるボアホールカメラの画像を鮮明化できる画像評価支援システム『N-IESS(エヌイース)』を開発しました。本システムにより、濁り等で不鮮明な画像を鮮明化処理することで、撮影手戻りや評価時間の削減、地盤の割れ目や破砕箇所などの判定精度の向上を図ることが期待できます。

■背景
地盤調査の基本となるボーリング調査では、ボーリング孔内にボアホールカメラを挿入し、撮影した孔壁画像から地盤の状態を評価判定することがあります。この時、ボーリング削孔時の孔壁の乱れや削孔水・地下水の濁りの影響により、不鮮明な画像が取得されることがあります。そのため、地盤の状態の評価判定に熟練を要したり、孔内洗浄および再撮影が必要になったりするなど結果が得られるまでに多くの手間と時間が必要でした。
そこで、画像の鮮明さの程度や担当者の熟練度を補い、画像を用いた地盤調査における評価の精度向上と作業の効率化を目的に、画像評価支援システム『N-IESS(エヌイース)』を開発しました。

■システムの概要
本システムは、さまざまな電子デバイスで撮影された画像の陰影や凹凸等の画像内の特徴を強調処理するもので、東京理科大学の小島教授によって開発されたVIS※2と呼ばれる画像処理法を採用しています(図1参照)。処理前後の画像をパソコンの画面上で確認しながら画像内特徴の強調処理を自由に設定でき、画像を用いた調査での対象物の評価において最適な処理画像を記録として保存することができます。
ボーリング孔内における外的な要因による不鮮明な画像の処理のほか、建設中のトンネルや建屋内などの光量が不足する環境で撮影した画像の先鋭化処理にも応用が可能であるため、現場調査での対象物の評価の迅速化に貢献します(図2参照)。現場でのリアルタイム評価および保存した画像データでの事後解析も可能で、どんな画像データにも適用できます。さらにタブレットやモバイル端末への組み込み、専用機器への実装等、使用状況・ニーズに合わせた展開が可能です。


■期待される効果
本システムは、各種画像の特徴(凹凸、線構造、エッジ、キメ、粗さ等)を強調させることにより、元画像の画質を劣化させることなく判読性を向上させることができます。したがって、鮮明な画像の再撮影等の手戻り削減や解析・評価時間の低減等の作業の効率化が期待できます。実証実験の結果、ボアホールカメラ撮影によるダム基礎岩盤の調査に当該システムを適用した場合、削孔水の濁りによる不鮮明画像でも従来比で平均50%以上割れ目判定性が向上することを確認しました。
また運用面では、企業先事務所での画像データを用いたリアルタイム協議、現場と本社または現場とコンサルタント等の遠隔二者間での画像を使った技術的協議・支援等での利用も想定できます。
本システムは、画像を用いた評価作業において、建設中および既設構造物(インフラ)の点検、調査、確認作業のみならず他分野での活用も期待されます。

■今後の展開
西松建設では、業務効率化の一環として、建設工事、インフラの維持管理等、様々な場面で電子画像データを用いた調査での対象物の評価技術の導入・活用を進めるとともに、その精度向上および効率化を支援するための技術開発を進めてきました。今後は、本開発システムを積極的に活用するとともに、種々なハードウエアへの適用性および撮影対象範囲の拡大を図り、更なる業務の効率化・生産性向上を目指してまいります。


※1:Nishimatsu Image Evaluation Support System、西松式画像評価支援システム
※2:VIS(Visual illusion based-Image feature enhancement System、錯視誘発画像特徴強調システム)とは
東京理科大学理工学部土木工学科の小島尚人教授によって開発されたシステムです。このシステムは、残像錯視を用いる鋭敏化効果(画像エッジの強調)と、エンボス効果(凹凸部の強調)を併せもつ錯視誘発画像と、元画像のもつ特徴量の大小を定量的客観的に評価できる視認性評価画像を出力できます(図3参照)。
①錯視誘発処理:元画像1コマに対して、システム上で疑似的に8方位(45度刻み)のエンボス効果画像を連続表示させて画像凹凸部を強調する鮮鋭化(残像錯視効果)・画像特徴強調処理であり、元種画像の特徴(凹凸、線構造、エッジ、キメ、粗さ等)の判読性を向上させます。
②視認性処理:錯視誘発処理後の画像特徴強調画像の特徴部分・変化点の見え方の違い(8方位分)を定量化して、画像のもつ特徴(線状構造、キメ、ざらつき等)別に表示することで、元画像の特徴を鮮明化、強調します。