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無給電・無線電力センサーを用いた水中ポンプ監視システム「Newt(ニュート)」を開発 -IoTによる無人監視で休日のトンネル坑内水没事故を未然に防ぐ-

お知らせ2020年08月06日

当社は、東京工業高等専門学校(水戸研究室)と泰興物産株式会社(東京都立川市 社長:丸田陽)が開発した無給電・無線電力センサーを活用し、水中ポンプの稼働状況を無人で監視するシステム『Newt(ニュート)』を開発しました(図-1参照)。
本システムを、トンネル坑内の複数個所に設置・稼働中の水中ポンプの分電盤に取り付けるだけで、水中ポンプの稼働状況をリアルタイムに確認することができます。
本システムは、常時、水中ポンプの消費電力量をクラウド上にアップロードし、一定時間、データが確認されない時は水中ポンプの稼働停止と自動で判断し、坑内に設置した警報回転灯の点灯、および関係者への警報メールの送信により異常・危険を知らせることができるため、トンネル坑内の水没事故等、トラブルを未然に防ぎます。

■背景
山岳トンネル掘削時にトンネル坑内で発生する湧水は、トンネル最先端部(以下、切羽)から水中ポンプと排水管により坑外まで排水され、濁水処理設備にて処理、放水されています。長距離トンネルにおける斜坑の交点部や下り勾配の切羽において、ひとたび水中ポンプが停止すると、トンネル坑内の重機や設備の水没、坑内路盤を痛めるなど重大な損害が発生します。そのため、トンネル現場においては現場が長期間休工する週末や、大型連休中においても水中ポンプの稼働を確認するための人員を配置しています。しかし、将来的な建設労働人口の減少や働き方改革にともない、休日に人員を配置することが難しくなる中で、省人化を図るために水中ポンプの稼働を無人で監視可能なシステムの導入が望まれていました。
このような背景から、当社では無給電・無線電力センサーを活用した水中ポンプ稼働状況の無人監視システム『Newt(ニュート)』を開発しました。

■概要
本システムでは、東京工業高等専門学校(水戸研究室)と泰興物産株式会社が開発した無給電・無線電力センサー「C3-lessセンサー」を活用しています(図-1参照)。電力センサーは、電線内に流れる電気の漏れ磁束により自ら発電することで、計測した電流値をゲートウェイに無線送信することができます。電流値のデータはゲートウェイから当社専用のクラウドサーバにアップロードされ、インターネット上でどこからでも閲覧することが可能です(図-2参照)。
データは5秒毎にサーバにアップロードされ、閾値を超えるデータを検出するか、水中ポンプがなんらかの原因により停止してデータがある指定した時間アップロードされない場合に、現場の回転灯が点灯するとともに、関係者に警報メールがプッシュ方式で送信されます。そのため、長期間休工する週末や大型連休中において、水中ポンプの稼働を確認するためにトンネル坑内を巡回する人員を配置する必要が無くなり、水中ポンプの停止をいち早く知ることで、対応も迅速に行うことが可能となります。

『Newt(ニュート)』の特長を以下にまとめます.

●水中ポンプの稼働監視
水中ポンプの電線に流れる電流を計測することで、水中ポンプ停止時に速やかに警報メールをプッシュ方式で関係者に送ることが可能である。
●設置が簡単
ゲートウェイを現場内のインターネット回線もしくはLTE回線などに接続し、C3-lessセンサーを分電盤内の電線を挟みこむように後から設置するだけで、すぐに監視が開始できる。
●電池交換不要
監視センサーは電線に流れる電流の漏れ磁束により自己発電するため電池は内蔵されておらず、電線に電流が流れる限り継続的に監視が可能である。
●電流値のクラウド監視
水中ポンプ以外にも様々な設備の電流値の計測が容易になるため、当社開発の「N-TEMS:西松トンネルエネルギーマネジメントシステム」(図-3参照)と連携して、きめ細やかな消費電力の管理を行うことで、現場の消費電力量削減に貢献できる。

本システムを活用することで、水中ポンプの稼働を無人監視し、トンネル坑内の水没を未然に防ぐことが期待されます。

■今後の展開
本システムは、当社施工中のトンネル現場での実証実験を継続し、効果の検証、システムの改善を進めていきたいと考えています。また、本システムは水中ポンプ以外の様々な機器の消費電力量の監視に応用することが可能なため、当社開発のトンネルエネルギーマネジメントシステム「N-TEMS」と連携させるなどトンネル工事に伴う消費電力量削減にも役立てていきたいと考えています。

図-1 『Newt』運用イメージ

写真-1 センサー分電盤取付状況その1

写真-2 センサー分電盤取付状況その2

図-2 Nishimatsu Senser CLOUD

図-3 N-TEMSモニタ画面