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下水汚泥焼却灰から肥料用のリンを高効率で回収する技術を開発 -酸とアルカリの二段階溶出法で重金属等を除去し肥料化-

お知らせ2020年01月23日

当社は、新潟大学(工学部、金 煕濬 教授)と共同で、下水汚泥焼却灰から肥料に利用できるリンを高効率で回収する技術を開発しました。本技術は、酸とアルカリの二段階溶出を行うことにより重金属等を除去することができ、直接肥料として利用できる形態のリンを効率的に回収することができます。また、リン回収後に残る残渣からも重金属等が除去されるため、残渣を有価資源にできることも特長です。

■背景
リンは人間にとって必須元素の1つであり、生命活動に欠かすことができない資源です。しかし、日本は天然のリン資源をもたないため、国内利用のほぼすべてを海外からの輸入に依存しており、リンの国内自給化は日本の大きな課題の1つです。
一方で、国内の下水処理場で発生する下水汚泥焼却灰には、リン鉱石と同等の濃度でリン成分が含まれています。この潜在的なリン資源を回収できれば、リンの国内自給化が可能になります。しかし、従来のリン回収技術は低い採算性(低回収率、残渣処分費)の問題や、残渣の重金属含有の問題といった課題の解決が必要でした。

■技術の概要
本技術は、従来技術より高い回収率(98%以上)で下水汚泥焼却灰からリンを回収でき、採算性向上を図れる高効率リン回収技術です。また、回収過程で重金属等を除去できるため、回収したリン(以下、回収リン)の多くはそのまま肥料として利用でき、リン循環型社会の構築に貢献します(図1参照)。


図1 本技術のリン循環型社会における役割


<本技術の特長>

・高い回収率で採算性向上
酸溶出およびアルカリ溶出の二段階溶出をおこなうことで、従来技術より高い98%以上の回収率で汚泥灰からリンを回収でき、その多く(約8割)をリン系肥料(リン酸カルシウム)として回収でき、採算性の向上を図ることができます(図2参照)。

・重金属等の除去による高品質のリン系肥料
二段階溶出によって、回収リンおよび溶出後の残渣からカドミウムやヒ素等の重金属等を分離除去できるため、高品質のリン系肥料が得られるとともに、残渣も資源化(例えば、建設資材原料やセメント原料等への利用)を図ることができます。

・肥料として直接利用
回収したリン系肥料は高純度で遅効性(緩効性)があり、重金属等の問題もないため、肥料として利用することができます。新潟大学における圃場実験では、回収リンで施肥をおこない、市販のリン肥料と比較をおこなった結果、同等の効果が確認されました(図3および図4参照)。


   図2 従来技術とのリン系肥料としての回収率比較


図3 圃場実験場(新潟大学敷地内)

図4 回収リンを施肥して収穫されたサツマイモ

■今後の展開
今後は技術の実用化に向けてスケールアップ(現状1kgスケール)した実証実験を計画・実施し、本技術のさらなる改善を図り、実用技術としての完成を目指します。また、下水汚泥灰の有効活用によるリン循環型社会構築に資する技術の1つとして、自治体等関係機関に技術提案をしていきたいと考えています。