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大型蓄電池の商用機開発を加速 -蓄電池を共同開発しているベンチャー企業に追加出資-

お知らせ2020年09月24日

当社は、LEシステム株式会社(本社:福岡県久留米市、社長:佐藤純一)の事業進捗に伴い、同社の第三者割当増資を引き受け、2億円の追加出資を決定しました。これは、当社が2019年度より取り組んでいるCVC(Corporate Venture Capital)として初めての出資となります。LEシステム株式会社への出資は、2016年1月の1億円と合わせ総額3億円となります。なお、今回のラウンドでは、既存株主の株式会社INCJ、東亜電気工業株式会社も出資を行い、LEシステム株式会社は総額7億円を調達しました。

■LEシステム株式会社によるバナジウム電解液の製造
LEシステム株式会社は、産業廃棄物である重油燃焼煤(EP媒)等から、レアメタルであるバナジウム化合物を回収し、更にそれを用いて低コストながら高品質のレドックスフロー電池用バナジウム電解液を製造する技術を持つベンチャー企業です。現在、バナジウム電解液の量産化をめざして福島県に、生産量5,000㎥/年(売上規模約20億円)の浪江工場(双葉町浪江町)を建設中であり、2021年夏に稼働開始予定です。国内では一定量のバナジウム電解液を製造できる企業はなく、また品質・価格が安定した電解液の供給は、蓄電池の急速な普及拡大に伴って、グローバル市場からも渇望されています。

■LEシステムと大型蓄電池を共同開発
当社は、2018年よりLEシステム株式会社と「バナジウムレドックスフロー電池(以下、VRFB)」の共同開発を開始し、現在、当社所有施設にて最大出力20kW、蓄電容量20kWhの蓄電システムの実証実験を進めながら、商用化に向けたシステム開発と準備を進めています。
レドックスフロー電池の名前は、redox(酸化還元)+flow(循環する)という意味で、リチウムイオン電池をはじめとした従来型の大型蓄電池の多くとは違い、電気エネルギーをポンプ循環する電解液(バナジウムイオン)に蓄えるという構造が大きな特徴です。このためVRFBには、システムの主要部分である電解液を、高品質で安定的に低コストで入手することが重要であり、今回の出資によるLEシステム株式会社との連携強化は、当社にとって商用化を加速させる大きな一歩となります。

■VRFBの特徴
【長寿命】
当社が開発しているVRFBは、実用化されている他の大型蓄電池と比べても、非常に長寿命な電池です。これは上記したように、電解液に電気エネルギーを蓄えるという特徴によるもので、充放電回数が無制限に利用可能で20年以上の耐久性を持ち、電極や電解液はほとんど劣化しないため半永久的に使用可能で、充放電を頻繁に繰り返す周期変動の吸収に向いています。 

【高い安全性】
装置は常温で稼働し、かつ不燃・難燃材で構成されており、発火や爆発の危険が極めて低いため安全性が高く、屋内空間や地下室等への設置にも向いています。 

【貯蔵電力量の正確な把握】
VRFBは、電解液のOCV(開路電圧)を計測することにより、貯蔵電力量の正確な監視が可能で、VPP(バーチャルパワープラント)のようなエネルギーリソースを正確に制御する必要がある場合にも優れた電池と言えます。

【設計の自由度と、高拡張性】
電池の「出力と容量」を「セルと電解液」で別々に設計・制御できるため、電解液を増やすことによって大容量化が可能であり、将来的に容量を増設することもでき、高い拡張性を持っています。

■再生可能エネルギー拡大の鍵となる「電力貯蔵システム」
電源における再生可能エネルギー(以下、再エネ)比率が16.9%(※)を占める日本をはじめ、世界中で再エネの導入が進んでいます。一方、風力発電や太陽光発電は天候の影響が大きく、発電時間や発電量が不安定であり、これらの電力を接続する送配電網に少なからず影響(周期変動、周波数変動、圧力変動など)を与えます。また、契約出力以上の発電ができた場合や、供給過剰になり電力系統から出力制御指令があった場合は、せっかく発電した電力を捨てているという課題もあります。
今後、さらなる再エネの導入拡大にはこれらの課題を解決する「電力貯蔵システム」が重要な鍵を握ると言われています。特に、瞬時に充放電が可能な大型蓄電池は、再エネとの相性が良く、現状最も実用的な貯蔵システムであり、なかでもVRFBは、上記のような特徴から電力品質の安定化に最も適していると言えます。
すでに、北海道電力、沖縄電力、九州電力の離島エリアでは、一定規模以上の風力発電と太陽光発電には大型蓄電池の併設が必要となってきています。海外でも、山火事やそれを回避する計画停電が多い米国カルフォルニア州では、自家消費電源向けに蓄電池の補助金が拡充されるなど、蓄電池の普及が確実に拡大しています。
※出典:エネルギー白書2020 第1部_第2章_第3節より

■今後について
当社は現在、VRFBを2022年頃に商用化することをめざして、小型化や蓄電効率の向上、コストの低減を進めています。将来的には、地域や施設単位での再エネによる自立電源や、風力発電・太陽光発電に併設し、「長短周期変動を吸収・調整できる電力貯蔵システム」として、また太陽光発電と併設することで、「長期対応型非常用電源システム」として災害に強い社会の構築と、クリーンエネルギー普及による低炭素社会の実現に寄与してまいります。

【ご参考】
報道発表資料 「スタートアップ企業との共創をめざして」
https://www.nishimatsu.co.jp/news/news.php?no=MzUw&icon=44GK55+l44KJ44Gb
報道発表資料 「再生可能エネルギーを最大限に活かすための蓄電システムを開発」
https://www.nishimatsu.co.jp/news/news.php?no=Mjcy