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鋼管楊重装置『Pi-Lif』および注入式長尺鋼管先受け工『AGF-Sq』の現場適用を実施

お知らせ2023年07月28日

-鋼管楊重とスクイーズ接続により安全性・生産性を向上-

 当社は、DSIニッシン株式会社(東京都立川市、社長:西島伸哉)およびドリルマシン株式会社(東京都荒川区、社長:永井 敏実)と共同で、山岳トンネル工事の切羽作業における注入式長尺鋼管先受け工に関して、ドリルジャンボにスクイーズ装置を搭載し、鋼管接続を自動化する『AGF-Sq』および新たに開発した鋼管楊重装置『Pi-Lif(Pipe Lifter)※1を実現場に導入して安全性・生産性の向上を確認しました。


■ 導入の背景

 一般的に、天端や切羽崩落の恐れがある山岳トンネル工事には、注入式長尺鋼管先受け工(AGF)が補助工法として採用されます。注入式長尺鋼管先受け工はトンネル天端部前方に鋼管を打設してトンネル周辺地山をアーチ状に補強する工法で、標準的に使用される鋼管は長さ3m程度の鋼管を4本接続して全長約12mの打設を行います。鋼管の接続はネジ式となっており、その接続作業は1本あたり約59kgと非常に重い鋼管をドリルジャンボに備えられているマンゲージ上で2名の作業員が人力で鋼管を回して接続する必要があります。この作業は作業員にとって苦渋作業であり、手指の巻き込まれ、挟まれなどの労働災害もたびたび発生しており、鋼管接続作業の自動化が課題となっています。また、ネジ式の鋼管接続の場合、打設済みの鋼管と新たに接続する鋼管の軸が揃っていなければ接続が困難であり、その場合、接続に時間を要することによりサイクルタイムが増加する問題もあります。

 このような背景から、当社では注入式長尺鋼管先受け工に関して、ドリルジャンボにスクイーズ装置を搭載し、鋼管接続を自動化した『AGF-Sq』および新たに開発した鋼管楊重装置『Pi-Lif(Pipe Lifter)』を実現場に導入して安全性・生産性の向上効果を確認しました。


0728-01.png注入式長尺鋼管先受け工施工例(正面図、側面図)


■『AGF-Sq』および『Pi-Lif』の概要

 今回導入した『AGF-Sq』は注入式長尺鋼管先受け工に通常用いられているネジ式の鋼管接続に代わってスクイーズ方式を採用した工法です。
 スクイーズ方式では、ドリルジャンボのドリフター先端に取り付けたスクイーズユニット(加締機)内の油圧クランプシリンダを使用して、事前に縮小加工したオス管端部を切羽に打設済みのメス管端部に圧着接続することができます。接続作業が機械化・自動化されるため、マンゲージ上での接続作業時における作業員の負担軽減となり、ネジ式と比較して接続時間が大きく削減されるため、安全性・生産性が向上します。
 さらに、長尺鋼管先受け工に使用される鋼管は非常に重く、人力による運搬や鋼管を機械上にセットする作業は作業員への負荷が大きくなり、腰痛などを引き起こす可能性があるため、新たに開発した鋼管楊重装置『Pi-Lif』によりマンゲージ上への鋼管の供給を機械化して鋼管のセットを効率化することで、作業負担の低減が可能となりました。


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『AGF-Sq』施工状況

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スクイーズユニット

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スクイーズ接続状況


AGF-Sq』および『Pi-Lif』の特長を以下にまとめます。

●安全性の向上
鋼管接続を機械化・自動化するスクイーズ方式の採用により、従来のネジ式鋼管による接続時に発生する手指の挟まれや巻き込まれ等の災害のリスクが低減し、安全性が向上します。

●鋼管楊重装置『Pi-Lif(Pipe Lifter)』による作業負荷の低減
長尺鋼管先受け工に使用される鋼管は非常に重く、人力による運搬、鋼管のセット作業は作業員への負荷が大きく、腰痛などを引き起こす可能性があるが、新たに開発した鋼管楊重装置により、マンゲージ上への鋼管の運搬、機械上へのセット作業に対する負荷を低減することが可能です。
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鋼管楊重装置『 P i Lif Pipe Lifter) 』


●サイクルタイムの短縮
スクイーズ方式では、鋼管接続を機械化・自動化することでネジ式と比較して鋼管接続時間が短縮されます。また、鋼管打設中に次の鋼管の段取りを行う際に、鋼管楊重装置により次の鋼管を取りに行くためのマンゲージの昇降が不要になり、鋼管のセットも容易となるため、鋼管接続作業全体のサイクルタイムを6割程度削減可能です。

●汎用性
本システムは各種メーカーのドリルジャンボに後付けが可能なため、汎用性の高いシステムです。


■ 証試験の状況と今後の展開

 国土交通省四国河川国道事務所中村河川国道事務所 不破原トンネル工事にて実現場施工を行った結果、新たに開発した鋼管の楊重装置による鋼管の運搬およびセット、スクイーズ装置による鋼管接続の自動化による安全性、生産性の向上を確認しました。

 また、本システムをはじめとした山岳トンネル無人化施工システム『Tunnel RemOS2の各技術の実証試験を2023年度までに完了する計画であり、2027年度までの実用化を目指して取り組みを続けていきます。

※1 鋼管楊重装置『Pi-Lif(Pipe Lifter)』は西松建設(株)、DSIニッシン(株)およびドリルマシン(株)の3社共同で特許出願中


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※2 山岳トンネル無人化施工システム『 Tunnel RemOS 』の構想