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二酸化炭素の回収・利用に適したバイオメタネーション技術の研究開発を推進

お知らせ2023年12月26日

-開発成果が第60回環境工学研究フォーラムで環境技術・プロジェクト賞を受賞-

 当社と国立大学法人横浜国立大学(学長:梅原出)ならびに三機工業株式会社(代表取締役社長:石田博一)は、二酸化炭素の回収・利用を実現するため、バイオメタネーション*1技術の研究開発に共同で取り組んでいます。本技術は、メタンへの変換にMBfR*2と呼ばれる膜技術を適用することで、二酸化炭素の分離精製から回収までをコンパクトに一体化した点が特徴です。このたび、本技術の開発成果が第60回環境工学研究フォーラムの環境技術・プロジェクト賞を受賞しました。

■背景
 脱炭素社会の実現に資する技術の一つとして、バイオメタネーションが注目されています。バイオメタネーションの原料のうち、水素については、再生可能電力による水の電気分解で確保することが共通認識となりつつあります。一方、二酸化炭素については、燃焼排ガスや消化ガス等からの回収・再利用が想定されますが、特に中小規模の排出施設に適した回収技術には課題がありました。

■詳細
 本技術の仕組みを図1に示します。二酸化炭素の分離精製は、シンプルな水洗(水への溶解)の原理にもとづいています。水洗の後、バイオメタネーション槽で溶存二酸化炭素を水に溶けにくいメタンに変換して、気体として回収します。つまり本技術では、バイオメタネーションが「二酸化炭素の有価物への変換工程」と「溶存二酸化炭素(に由来する炭素)の不溶化による回収工程」の二つの役割を果たしています。さらに、バイオメタネーション槽にMBfRを用いるため、水素の供給に要するエネルギーが節減できるとともに、生成したメタンへの水素の残存が抑制できます。
 2023年度は、横浜国立大学大学院 工学研究院 環境生物化学工学研究室(新田見 匡 准教授)で実験室規模の装置(図2)を運転して、本技術によるメタン生成を確認しました。これらの成果を取りまとめた発表「水素供給membrane biofilm reactorMBfR)によるバイオメタネーション」が、このたび、第60回環境工学研究フォーラム(主催:公益社団法人土木学会 環境工学委員会)の環境技術・プロジェクト賞を受賞しました。
 なお、本研究開発の一部は、公益信託下水道振興基金「2023年度下水道の防災・減災、強靱化と活用に関する研究等助成」(代表者:横浜国立大学 新田見 匡)を受けて実施しています。

■今後の展開
 当社は、本技術の社会実装による2050年カーボンニュートラルへの貢献を目指して、今後も三者での共同研究開発に取り組んでまいります。

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図1 二酸化炭素回収・利用一体型バイオメタネーションの仕組み


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図2 実験装置(左:バイオメタネーション槽、右:CO2溶解槽)



*1 バイオメタネーション
 水素と二酸化炭素からメタンを生産するメタネーション技術のうち、微生物(主に水素資化性メタン生成古細菌)の反応を利用するもの。

*2 MBfR
 membrane biofilm reactorの略称。MABRmembrane-aerated biofilm reactor)と呼ばれることもある。気体透過膜の片側に生物膜を担持して、逆側から生物に用いる気体を供給する技術。膜を介した気体の供給は濃度勾配に応じた拡散現象であるため、曝気(気泡生成+撹拌)に比べて大幅な省エネとなる。また、気体を溶存状態で局所的に供給できるため、適切な制御の下では、供給した全量が生物膜内部で消費される