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フォークリフトによる床版取替工事用の専用治具を開発

お知らせ2023年11月06日

-クレーン作業が出来ない作業環境でも新設床版設置作業の効率化を実現-

 当社とオックスジャッキ株式会社(東京都中央区、社長:山本將人)は、クレーン作業が出来ない条件の床版取替工事に対して、フォークリフトに装備する床版作業用の専用治具を開発し、従来よりも短時間で精度よい床版設置作業を可能にしました。


■ 開発の背景

 高速道路の構造物は老朽化が進んでおり、現状のまま進むと、2030年には開通から30年以上経過した道路が約8割になる1と言われています。このような背景から、高速道路会社は、「高速道路リニューアルプロジェクト」2として大規模更新工事を進めています。橋梁については、老朽化や変状が発生した床版の取替工事が行われています。
 床版取替工事のうち、新設床版の設置は、一般的にはクレーンを使用して行います。しかしながら、工事箇所の周辺環境によっては、クレーン作業が出来ない、もしくはクレーン作業時間が制限される箇所があります。
 そこで当社は、短時間で精度よく大型フォークリフトを用いて新設床版の運搬・設置を行うことを検討しました。新設床版の設置精度は、床版間の継手金物の連結に関する許容値が数mmとなる場合もあります。これに対応するため、設置する床版位置をリモコン操作で微修正(回転調整(±4.8°)・前後調整(±100mm))することが可能な「床版作業用治具」を新たに開発しました。なお、新設床版を把持・揚重する鉛直ジャッキ(ジャッキストローク長850mm、上記のリモコンで操作可能)は、実施工の新設床版に設置される把持金物数に合わせて8本(油圧制御可能)としました。



■ 実大実験の概要および結果

 床版作業用治具の性能を検証するため、実工事で設置する新設床版と同程度の大きさの模擬床版(橋軸直角方向幅:12.4m)を製造するとともに、24t級の大型フォークリフトに「床版作業用治具」を装備させ、運搬および設置試験を実施(202310月上旬に実施)しました。運搬路については、実工事を想定して、橋軸直角方向角度を約3°として造成しました。
 実大実験では、模擬床版を仮想床版設置位置まで運搬後から設置までの時間および設置精度を検証しました。床版設置に関する時間については、別途実施した一般的な手法であるクレーンを用いた設置時間と比較検証しました。設置精度については、床版間継手金物を想定し、床版間距離20mm許容値±2mm、橋軸直角方向のズレに対する許容値±5mmとしました。
 実大実験の結果、設置精度の許容値(橋軸方向、橋軸直角方向共)内での床版設置に要する時間は225秒(実験10回の平均、最速時間:1分36秒)で、一般的なクレーン作業と同等(実験6回の平均:2分39秒)以下であり、十分な施工性を有することが確認できました。これにより、新たに開発したリモコン操作可能な「床版作業用治具」を装備することで、大型フォークリフトによる新設床版の運搬・設置作業が安全・容易に精度よく実施できることが検証できました。



今後の展望

 当社は、今回の実大実験の結果を精査して、今回開発した「床版作業用治具」をより使用性の良い装置となるよう改良を継続します。また施工条件に制約がある場合でも、安全にかつ高速に床版取替工事が実施できる技術開発を進めてまいります。


1:独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構:パンフレット「高速道路機構の概要2021
https://www.jehdra.go.jp/pdf/kikopdf/pamph_2021_02.pdf

※2:中日本高速道路株式会社:高速道路の更新事業
https://www.c-nexco.co.jp/corporate/operation/maintenance/renew/


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1 床版作業用治具(左:治具全景、右:治具リモコン画面)


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図2 大型フォークリフト、床版作業用治具を用いた実大模擬床版運搬設置状況(運搬状況)


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3 大型フォークリフト、床版作業用治具を用いた実大模擬床版運搬設置状況(設置状況)