補助工法等の注入データの3D可視化・分析が可能な「GroutViz」を開発
お知らせ2024年10月07日
-トンネル周辺地山を多面的に評価-
当社は、ジオマシンエンジニアリング株式会社(東京都荒川区、社長:塚田純一)、株式会社カテックス(愛知県名古屋市、社長:加藤巳千彦)と共同で、山岳トンネル工事における薬液注入データの三次元可視化やそれを基にした地山性状の定量評価を可能とするシステム「GroutViz」(グラウトビズ)を開発しました。
「GroutViz」概要
■背景
山岳トンネル工事では、切羽の安定性向上を図るために不良地山に対してボルト・鋼管等を打設する際に急結性の薬液の圧力注入を行う補助工法を実施することがあります。薬液注入時には注入圧、注入率、注入量といったデータが管理され、打設箇所周囲における地山内の亀裂・空洞の多さや透水性等の評価指標として参考にすることがありますが、その管理は実施回ごとに表やグラフにまとめるまでにとどまっており、トンネル周辺地山全体を定量的に評価するまでには至っていませんでした。
そのような背景から、薬液注入時のデータの三次元可視化や定量評価が可能な「GroutViz」を開発しました。
(「Grout」は注入材料を意味する英単語、「Viz」は可視化を意味する英単語「Visualization」の略)
■概要
本システムでは、注入装置で記録した注入率、注入圧、注入量といったデータを専用の解析ソフトで読み込むことで、注入データの三次元可視化や、逆距離加重法※等の空間データ補間機能を用いた分布傾向の分析を行うことができます。
本システムを活用することで、以下の効果が期待されます。
効果① | 複数回の注入データをまとめて三次元可視化することで、これまでの注入状況の整理や、今後の実施回の計画に活用できます。 |
効果② | 注入データの分析結果を用いたトンネル周辺地山の地山性状の把握が可能となります。例えば注入率に着目した場合、この値が高い領域では当初想定以上に亀裂が発達していると推定でき、肌落ちの注意喚起や支保パターンの見直し等につながります。 |
効果③ | かねてより開発・適用が進められてきた「DRISS-3D」※等の削孔検層技術と併用することで、より詳細な地山評価が可能となります。削孔データを用いて地山の硬さという観点で評価を行う削孔検層と併せて本システムを運用することで、地山性状を多面的に把握することができます。 |
本システムを当社施工中のトンネルへ適用した結果、注入データは実際の地質構造と概ね同様の傾向を示しており、本システムが地山評価に有用であることが確認できました。
システムで求めた注入率の分布と切羽観察結果の比較
特に脆弱な土砂の分布範囲で注入率(計画の注入量に対する実際の注入量の割合)が増加
■今後の展開
今後は、複数の山岳トンネル現場への適用を重ねることで、システムの更なる改良を進めていきます。
■補足説明
※逆距離加重法
実際に観測されたデータを用いて、観測点以外の場所(計算点)におけるデータを推定するための空間補間の一種です。計算点から一定の距離内にある観測データを対象に、計算点から観測点までの距離の逆数を重みとした平均値を求めます。
※「DRISS-3D」
山岳トンネルの掘削に使用されるドリルジャンボの施工データ(装薬孔・ロックボルト孔の削孔データ)を使用して、切羽およびその近傍の地山性状を定量的かつ詳細に3次元評価可能な地山評価システムです。
過去のニュースリリース
山岳トンネル掘削時の削孔データを用いた3次元地山評価システム「DRISS-3D」を開発
-ドリルジャンボの施工データを用いて切羽周辺の地山強度を連続的に3次元評価-(2017年6月)