濁水処理設備の自動管理システム『FlocTrack』を開発
お知らせ2024年02月13日
-AIを活用して大幅に時間と手間を短縮-
当社は、山岳トンネル工事などに設置される濁水処理設備における処理剤の添加量をAIで自動管理できるシステムを開発しました。本システムの活用により、担当者の管理時間の削減や、処理剤の過剰添加の防止が期待されます。
■ 背景
土木工事で発生した湧水は、土粒子やコンクリートが混入することにより濁度やpHが高くなるため、現場内の濁水処理設備にて中和処理や凝集処理が施され、放流基準を満たしてから河川等へ放流されます。処理作業時には、担当者が汚濁水の処理状況を現地で目視点検し、複数の処理剤を最適量に調整・添加しています。
特に、トンネル現場では地質の変化や切羽で実施中の工種によって水質が異なるため、処理剤の調整を頻繁に行う必要があります。また、現場では湧水が常に生じるため、夜間や休日においても管理が必要なことから、担当者の拘束時間の短縮が課題となっています。
■ システムの概要
当社は、濁水処理設備をAIで自動管理するシステム『FlocTrack(フロックトラック)』を開発しました。本システムは、濁水処理設備内で計測したpHや濁度、土粒子の凝集状況(フロックの形成状況)の映像をもとに、汚濁水の水質に合わせて各種処理剤の添加量を最適に調整し添加します(図ー1)。よって、現場から突発的に汚濁水が発生した場合においても、臨機応変に対応することが可能です。
■ システムの特長
- 管理業務の削減による省力化
処理剤の添加量の調整・添加を自動化することで、濁水担当者の管理時間が約36%短縮され、省力化が期待できます。実績として、従来は1週間当たり730分であった管理時間が、本システムの活用により470分になりました。
- クラウドによる遠隔監視
計測データと映像データはクラウドにアップロードされるため、Web上で遠隔地から設備の稼働状況を監視することが可能です(図-2)。
- AIの精度向上による過剰添加の防止
クラウドに蓄積されたデータをAIの再学習に活用し判定精度を向上させることで、処理剤の過剰添加を防止します。
■ 今後の展開
今後は、山岳トンネル現場に限らず複数現場での運用を積み重ねることでAIの判定精度を向上させ、地質条件の異なる様々な現場に対応可能な、より汎用的なシステムの構築を目指します。それとともに、各種処理剤の残量管理にも取り組み、濁水処理設備の運転・管理作業の自動化を目指します。
■ 備考
本システムはジオマシンエンジニアリング株式会社(社長:塚田純一)、株式会社sMedio(社長:岩本定則)、MODE,Inc.(社長:上田学)とのコンソーシアムで開発した技術であり、「官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)」の予算を活用した国土交通省の令和4年度「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」の試行技術として採用されました。
図-1 濁水処理設備自動管理システム「FlocTrack」概要図
図-2 稼働状況監視用のWebページ