ニュース

山岳トンネル工事における日常的な計測作業の省力化・安全性に貢献

お知らせ2024年02月05日

-内空変位計測の効率化を実現する『スマートプリズム』を開発-

 当社は、山岳トンネル工事において容易に内空変位の計測作業が行える『スマートプリズム』を開発しました。スマートプリズムを活用することで、一般的なプリズムの取付け・取外しに伴う高所作業が不要となるため、作業の省力化や安全性が期待されます。

■背景
 山岳トンネル工事では、トンネル掘削に伴う地山のゆるみや支保の妥当性を確認するために、日常的に内空変位計測を行い、地山の変形挙動を把握しています。計測作業では、トンネル壁面に設置された複数のプリズムの座標を測量し、初期値との差分から変位量等を把握します。
 より正確な初期値の計測には、プリズムを切羽近傍に設置する必要がありますが、重機や発破による飛び石との接触によりプリズムの破損リスクが高まります。そのため、計測作業の度に高所作業によるプリズムの取付け・取外し作業が行われ、計測作業の効率性と安全性に問題がありました。
 そこで、トンネル壁面にプリズムを挿入配備することで、プリズムの破損リスクを減らし、プリズムの取付け・取外し作業を不要とした『スマートプリズム』を開発しました(図1、2)。

■詳細
 スマートプリズムは、360°プリズムの送出・格納機構を有する『プリズム伸縮装置』、プリズム伸縮装置を孔内に固定する『固定筒』とプリズムの遠隔操作を行う『リモコン』の3つから構成されます(図3)
 設置は、ドリルジャンボを用いて壁面に設置用の孔を削孔後、固定筒を孔内に挿入、さらに固定筒内にプリズム伸縮装置を挿入して固定します。
 計測時には、設置したプリズム伸縮装置より360°プリズムをリモコンで送出します。計測後はリモコンで再びプリズム伸縮装置に格納します(図4<)。
 本機器を活用することで日常的なプリズムの取付け・取外し作業が不要となり、計測作業にかかる時間や人員の削減、高所作業の低減が見込まれます。また、固定筒は、ロックボルト孔や検査孔と同様のφ45mmの孔に設置可能となっているため、ロックボルト工の平行作業として削孔・設置が可能であり、施工サイクルへの影響も少なくなります。各装置の詳細は、以下になります。

①プリズム伸縮装置
プリズム伸縮装置は、アクチュエータにより、精度よく360°プリズムの送出と格納を行います。そのため、遠隔操作信号を通信する無線モジュールや長期間の稼働を可能とするバッテリが搭載されています。計測期間の終了後は、固定筒より取外し、再度充電や設定を行うことで、繰り返し使用可能です。

②固定筒
固定筒は、φ45mmの削岩ビットを用いて削孔された孔に挿入し、プリズム伸縮装置を固定する装置です。本装置は、プリズム伸縮装置のずれや抜け落ちを防止するための返し部、固定するための接続部、所定の深さで止めるための突出部があります。内側には防水シートが貼付されており、湧水等が内側へ浸入しにくい仕様となっています。

③リモコン
360°プリズムの格納・送出の遠隔操作を行います。通信距離は15m以上であるため、切羽から離れた安全な場所で操作可能であるとともに、高所作業が不要になります。



■今後の展開

 開発したスマートプリズムは、当社施工中の山岳トンネル現場にて導入・検証中です。今後は実適用を通して、本システムの精度や耐久性、使用感等を継続的に改良してまいります。将来的には内空変位計測の自動化を目指し、山岳トンネル工事の無人化・自動化施工の実現に貢献していきます。



nl240405_01.png

1 スマートプリズムの概要


nl240405_02.png
2 内空変位計測における従来方法とスマートプリズムを用いた新方法の比較



nl240405_03.png
図3 スマートプリズムの構成装置



nl240405_04.png4 遠隔操作状況