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打設直前に繊維混入流動化コンクリートが製造できる
「再アジテートシステム」を開発

お知らせ2024年02月15日

-長距離圧送後に連続再練り混ぜすることでコンクリートの品質低下を解消-

 当社と株式会社デーロス・ジャパン(石川県金沢市、社長:森井直治)は、道路供用下での山岳トンネルの覆工リニューアル工事において、長距離圧送後のコンクリートを連続再練り混ぜすることで、高品質のコンクリートを製造完了できる装置「再アジテートシステム」を開発しました。


■ 開発の背景
 矢板工法で建設された道路トンネルは、経年による材質劣化によって変状が発生し、通過交通の安全性が脅かされています。そこで、矢板工法で建設されたトンネルのリニューアル工法として覆工再生工1が開発されています。この覆工再生工では、以下のような項目が要求されています。

①:覆工再生工で施工される新たな覆工は、厚さ200mmで繊維補強コンクリートを用いる仕様となるので、バイブレータワークが困難であり、自己充填性が高い流動性を有したコンクリートが求められます。

②:覆工再生工では、供用下の施工が想定されており、新設のトンネル覆工打設のように打設箇所に接近して圧送ポンプやアジテータ車の配置ができないことから、コンクリートは長距離の圧送となり、スランプロス等が懸念されるので、管理項目2を満たした性状の確保が求められます。

③:供用下での施工空間は、一般車両通行帯とトンネル壁面間の距離1.7m以下の範囲内での施工となるので、打設箇所近傍で大型の機材を用いた繊維および流動化剤の混合は出来ず、コンパクトな装置とすることが求められます。

 そこで当社では、打設直前で繊維や流動化剤を添加することで打設するコンクリートの品質の安定性や施工性の向上が図れると考え、繊維および流動化剤を連続的に添加・再練り混ぜすることが可能で、かつ狭隘な空間に配置可能な「再アジテートシステム」を開発しました。

■ 再アジテートシステムの概要(図1)
 再アジテートシステムは、供用下での覆工再生工事を想定しており、以下の仕様としています。

・繊維および流動化剤の投入方法:連続的に投入(装置に繊維投入装置と流動化剤貯留タンクを配置)
 ただし、投入速度は、通過するコンクリートの流速に応じて制御できること
・繊維混入流動化コンクリートの製造能力:15m3/h以下
・装置規格:高さ 約2.5m、幅 約1.2m、延長 約4.9m

■ 実大実験の概要および結果(図2、図3)
 開発した再アジテートシステムの性能を確認するため、2車線断面級の模擬トンネルの内側に再生覆工を構築する実大実験を実施し、再練り混ぜして製造された繊維混入流動化コンクリートの品質を確認するとともに、製造および打設時の中断等のトラブルの有無を確認しました。繊維混入流動化コンクリートの品質は、スランプフロー、空気量、繊維混入率を管理項目とし、いずれも規定値を充足する結果となりました。なお、実験において、装置のトラブル等による打設の中断も発生しませんでした。
 以上より、今回の実大実験の結果から、本システムは実施工でも使用可能であることが確認できました。

■ 今後の展望
 道路トンネルの老朽化が進んでいる今日において、供用しながら大規模更新を実施することは、必要不可欠な技術と考えます。
 当社は供用下でも高品質なコンクリートが構築できるよう、本システムを含めた技術開発を継続してまいります。

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図1 再アジテートシステム

240215_f2.jpg図2 打設試験実施状況


240215_f3.jpg図3 再生覆工コンクリート
(左:製造前スランプ21.0cm、右:製造後スランプフロー64.0cm×62.0cm)


※1:「供用下における矢板工法トンネル覆工再生工に関する手引き(案)中日本高速道路株式会社 金沢支社」の改定について
https://www.c-nexco.co.jp/topics/1661.html
※2:中日本高速道路他:トンネル施工管理要領繊維補強コンクリート編,令和2年7月 pp.10~13