板ジャッキを活用した床版切断撤去施工技術を開発
お知らせ2024年03月04日
-合成桁形式の床版撤去時間の短縮化を実現-
当社とコンクリートコーリング株式会社(東京都練馬区、社長:小澤純)は、合成桁形式の床版取替工事において、板ジャッキを用いた床版切断撤去技術を開発し、でかつ環境に優しい施工を可能にしました。
■ 開発の背景
高速道路の大規模リニューアル工事が各地で進められ、老朽化した床版の取替工事が行われています。
床版取替工事では最初に既設床版を切断撤去したのち、新設床版を設置して更新を行います。合成桁形式の床版の場合、主桁とコンクリート床版がジベル筋で強固に接合されているため、剥離による床版撤去が困難です。通常は主桁両端付近でコンクリート床版を切断し、桁間の床版を撤去した後、主桁上に残ったコンクリートをブレーカ等ではつり撤去します。そのため、はつり作業に多くの時間を要すること、はつる際に主桁を傷つけてしまう懸念があること、また騒音等の問題がありました。
そこで当社は、「板ジャッキ」を用いて短時間で合成桁床版を撤去する方法を考案、開発しました。板ジャッキ(図1)とは特殊鋼板を袋状に溶接した部材で、5MPa程度の水圧を作用させ膨張させて、コンクリートを破断させる装置です。使用方法は、既設床版のハンチ部や上面にカッター等で切断したスリットに板ジャッキを挿入し、専用ポンプにて板ジャッキに水圧を作用させ、スリットを拡張・延伸させます。必要な位置にてコンクリート破断が生じ、分離した床版をクレーンにて撤去します。既設床版(鈑桁、箱桁)の形状、配筋状況の条件を考慮して、適切なスリットの方向と深さおよび板ジャッキ加圧順序を設定することで、効率的な破断が可能となります。
■ 本工法の特徴
引張力に弱いというコンクリートの特性から、5MPa程度の小さな水圧で破断できます。
コンクリートの破断は瞬時であること、桁上に残るコンクリートは最小限になることから、はつり作業が大幅に低減し、施工時間が20~50%※短縮できます。 ※実験時の値
使用機材はカッター(道路カッターやウォールソー)、水圧ポンプ、板ジャッキなどであり、狭隘な場所でも設置撤去が容易です。
従来方法よりも騒音及び振動の発生時間も短いため、周辺住環境への影響が少なくなります。また、プレス機を用いることで、拡張した板ジャッキを元の形に戻せるため、複数回の使用が可能となり、経済的にも優しい部材です。
■ 実証実験により効果を確認
板ジャッキによる床版切断方法の適用性を検証するために、鈑桁および箱桁の合成床版の模擬供試体を製作し、板ジャッキを用いた切断実験を行い、効果を確認しました。
(1)鈑桁床版の場合(図2、図3)
鈑桁を模擬した供試体(床版厚:220mm、橋軸直角方向幅880mm,橋軸方向延長:4mを製作し、床版と主桁の接合に馬蹄形ジベル筋を300mm間隔で配置しました。板ジャッキを用いた試験を実施した結果、割裂が床版の鉄筋に沿って発生し、これにより主桁上に残存するコンクリートは30%に低減することが可能であることを確認しました。
(2)箱桁床版の場合(図4)
箱桁を模擬した供試体(床版厚:280~400mm,橋軸直角方向幅:4.0m、橋軸方向延長:4m,横断勾配3.1%)を製作し、馬蹄形ジベル筋を床版両端部に300mm間隔で配置しました。実験の結果、板ジャッキの使用順序を床版中央、ジベル筋付近として加圧することで、簡単で迅速に床版を剥離・破断できることを確認しました。これにより、一般的なブレーカによる撤去方法に比べ約50%の施工時間の短縮が可能であることを確認しました。
■ 今後の展望
当社は、今回開発した「板ジャッキ」工法の実験結果を精査し、より使用性を向上させ改良を行い、実施工を想定した実大実験を実施して、より円滑な作業ができる工法となるよう技術開発を進めます。
図3 膨張した板ジャッキ
図4 合成箱桁橋の模擬床版における施工状況