「場所打ちコンクリート杭工事の支持層到達管理システム」を開発
お知らせ2024年04月09日
-支持層への到達を見える化し、精度向上を目指す-
当社は、場所打ちコンクリート杭工事※1における支持層※2への到達確認を精度よくリアルタイムに行うことを目的として、アースドリル工法※3に特化した支持層到達管理システムを開発しました。
■ 背景
杭工事において、支持層への到達確認は重要な管理項目となります。アースドリル工法による支持層への到達確認では、施工時の掘削土と事前の地盤調査時に採取したサンプル試料を目視により比較する方法で行われています。しかし、全ての杭位置にてサンプル試料が揃っていることは稀であり、支持層と支持層上部の土質の変化が小さいような地盤では、現場技術者が支持層到達を見誤るリスクも存在します。そのため、目視以外の方法で支持層到達を確認する技術の確立が望まれています。
■ システムの概要
本システムでは、従来の支持層への到達確認に加え、地盤の硬さに応じて変化する掘削機の振動を見える化したデータを判断材料とします。掘削機に取り付けた加速度センサーで測定したデータをもとに新たな加速度指標を定義し、深度計の表示から画像処理(OCR)で取得した深度情報を用いて、当該指標の深度分布をリアルタイムに作成・表示します。
本システムを利用した支持層への到達確認は、加速度指標の深度分布と標準貫入試験※4のN値の深度分布との関係性を1本目の杭で把握し、それ以降に施工する杭では、この情報をもとに、加速度指標の深度分布の変化により支持層到達を判断します。
その他の本システムの特徴を以下に示します。
- 現場技術者は各自のモバイル端末から測定結果をリアルタイムにモニタリングできます。
- 加速度センサーは、無線式を採用しており配線作業は不要です。
- 複数の機種の掘削機に対応しており、汎用性があります。
- 測定作業で掘削を妨げることはないため、従来通りの工程で施工が可能です。
図2 システム画面の結果表示例
■ 期待される効果
本システムにより、従来の掘削土と地盤調査時のサンプル試料を目視で比較する確認方法だけでなく、掘削機の振動データといった新たな判断材料と併せることで、支持層への到達確認がより高い精度で行うことができます。
■ 今後の展開
当社は、今回開発したシステムを場所打ちコンクリート杭工事に適用し、支持層到達管理システムの信頼性向上を更に進めてまいります。
※1 場所打ちコンクリート杭工事:現場にて一から築造する杭で地盤に孔を掘り、鉄筋籠を建て込んだ後にコンクリートを流し込んで築造する工事。
※2 支持層:構造物を支持する能力があり、かつ沈下に対しても安全である地層。
※3 アースドリル工法:場所打ちコンクリート杭を地中に築造するための工法の一種で、機械装置が簡単・施工速度が速い等の理由から、建築分野で最も多く採用されている工法。
※4 標準貫入試験:規格化された試験方法で、地盤の固さや締まり具合を表す指標(N値)を調査する試験。N値は設計者が支持層を設定するための情報の一つとして利用されています。