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再生覆工のプレキャスト化で高速施工を実現
お知らせ2025年03月10日
-再生覆工にPCL工法®を採用―

図1 フォークリフトに装備した「運搬・架設装置」(PCL版把持状態)
当社とPCL協会(東京都墨田区、会長:小林一博)※は、山岳トンネル覆工の補修・補強に使用する、側壁一体型のPCL版と、その運搬と架設を高速に行える装置を開発、実証し、再生覆工の高速施工を可能としました。
■ 開発の背景
山岳トンネルの覆工コンクリートの補修・補強工法では、「覆工再生工」という施工技術があります。覆工再生工は供用下での施工が一般的であるため、施工の際には、コンクリート打設箇所付近にポンプ車の配置や生コン車を待機させることができません。そのため、コンクリートを圧送する配管のトラブルや、交通障害が発生した場合はコンクリート打設が計画通りに実施できず、施工が遅れることになってしまいます。
この課題を解決するため、当社とPCL協会は、現場打ちを必要としないPCL工法による再生覆工のプレキャスト化について技術開発を進めてまいりました。
■ 新たに開発した技術
- 1PCL版を天端から下半脚部までの側壁一体型に変更(図1)
- 一般的にPCL工法®では上半はPCL版を採用し、下半は現場打ちコンクリートにて側壁を構築します。今回は新たにPCL版を天端から下半脚部までの側壁一体型に改良することで、場所打ちコンクリートの施工そのものを省略できるようにしました。
- 2フォークリフトに装備する「運搬・架設装置」の開発(図1)
- 側壁一体型のPCL版の運搬・架設や架設時の微調整を高速に行える「運搬・装置」を新たに開発しました。開発にあたり、側壁一体型のPCL版が損傷せずに運搬、架設でき、機動性に優れたフォークリフトを採用しました。
運搬・架設装置は、フォークリフトのツメ部と連結する構造とし、トンネル周方向に対する「ピッチング機能(PCL版の傾きの調整機能)」と「ヨーイング機能(PCL版の回転調整機能)」といった架設時の微調整機能を備えました。また、重量バランスをとるためのカウンターウエイトも装備し、トンネル軸方向、軸直角方向(鉛直および水平)調整は、フォークリフトの機能を活用することにしました。
■ 実大実験の結果(図2、図3および図4)
今回開発した各技術を検証するため、西松建設の山岳トンネル技術開発拠点「Nフィールド」の模擬トンネル内にて、実大実証試験を実施しました。なお、今回開発のPCL版は、覆工再生工事での施工で、規模は高速道路トンネル断面級と想定しました。
【実大実験結果の概要】
- フォークリフトに「運搬・架設装置」を装備させ、側壁一体型のPCL版の運搬および架設実験を実施した結果、PCL版の損傷はありませんでした。また、実証実験では、実施工を想定して設置個所背面に防水シートを想定したシートを敷設した状態で実施しましたが、シートの損傷もありませんでした(図2、図3)。
- 工場製作の高品質のPCL版を使用し、また運搬~架設までの工程で損傷等が発生しないことを確認できたことから、本工法は、場所打ちコンクリートと同等以上の高品質な再生覆工を構築できる工法であることが検証できました(図4)。
- 実証実験の結果より、PCL版の設置に必要な時間は30分/枚(積込、運搬および架設の合計)となりました。これは場所打ちコンクリートによる再生覆工の施工と比較すると、裏込め注入等の作業を含めても約7日(52.5mあたり)の工程短縮が見込まれることになります。
- 側壁一体型のPCL版を使用することで場所打ちコンクリートの施工そのものが省略できます。コンクリート打設時の作業やトラブルリスクが(配管閉塞リスクや打設時の型枠の崩壊リスク等)がなくなることから、品質や安全性が向上します。
■今後の展望
当社は、今回開発したPCL版を今後の覆工再生工事に適用する計画を進め、高速施工に伴う車線規制期間の縮減と生産性向上を進めてまいります。

図2 実大実験状況(運搬)

図3 実大実験状況(架設)ー

図4 実大実験状況(架設完了全景)
- ※PCL協会:株式会社IHI建材工業(東京都墨田区)、ジオスター株式会社(東京都文京区)、日本コンクリート工業株式会社(東京都港区)、日本サミコン株式会社(新潟県新潟市)の4社で構成