ニュース

覆工コンクリートの表層品質をAIが自動評価する『A.E.s.SLiC(イースリック)』を開発 - AI 活用技術で山岳トンネル施工の生産性向上 -

お知らせ2021年03月19日

当社は、株式会社 sMedio(東京都中央区、社長:岩本定則)と共同で、山岳トンネル覆工コンクリートの表層品質評価を行うための AI(人工知能)活用技術『A.E.s.SLiC(イースリック)』を開発しました。
本システムは、覆工コンクリート写真を用いて、「表層目視評価シート」に則った①はく離②気泡③水はしり・砂すじ④色むら・打重ね線⑤施工目地不良⑥検査窓枠段差の6項目を AI が自動評価します。本システムによって、評価および評価結果とりまとめ作業の迅速化と、不具合発生時の改善対策の早期実施が期待されます。

■背景
山岳トンネル覆工コンクリートの品質・耐久性を確保するためには、覆工コンクリート表層品質を評価し、出来形を確認しながら適切な施工方法を検討することが重要です。これに対して、「表層目視評価」を実施してコンクリート表層品質を定量評価する手法が、2018年に東北地方整備局で試験導入されて以降、全国的に展開が進んでいます。これは、コンクリート構造物全体を目視確認したうえで、総合的に全体を評価するものであり、特別な技能を必要としないため、担当者の熟練度に関わらず評価が実施可能です。 しかし、評価担当者の個人差やPDCAサイクルに有効活用するために必要な評価結果のとりまとめ作業に時間を要する、等の課題があります。
そこで、山岳トンネル覆工コンクリートの品質・耐久性確保において重要な目視評価の平準化と、評価結果とりまとめの工程を迅速化し、覆工コンクリート表層品質の良否確認、施工方法の妥当性確認、改善対策の要否判断を迅速に行うための AI 活用技術『A.E.s.SLiC(イースリック)』を開発しました。

■システムの概要
本システムは、タブレット、クラウトサーバー、PC端末により構成されています(図1参照)。タブレットやデジタルカメラ等で撮影した覆工コンクリート面の写真を入力すると、「表層目視評価シート」の各項目についてAIが自動評価し、その結果が出力されます。また、『VIS』※と呼ばれる画像処理法を写真に適用して覆工コンクリート面の凹凸やエッジ、キメ、粗さ等の視認性を上げる機能もあります(図2参照)。VISにより鮮明化処理された画像は、本システムの教師データ補強、現場の状況により不鮮明な画像しか取得できない場合の評価精度の維持・改善を目的としています(図3参照)。

■システムの特徴
・画像処理機能(VIS)の併用
覆工コンクリート面の凹凸やエッジ、キメ、粗さ等の特徴点を鮮明化することにより、照度不足等が原因の不鮮明な写真についても評価精度を向上させることが期待できるほか、教師データの増強にも役立てられます。

■期待される効果
①評価作業の効率化
覆工コンクリート面の写真撮影や評価日、評価者、コメント等必要事項の記入は、iPadアプリひとつで実施可能であるため、クラウドサーバーへの各種情報の登録およびAIによる評価が現場で完了します。これらのデータは、Webアプリを介して事務所PC端末にて所定の目視調査評価票の形式で出力できます。これにより、データ入力や評価結果のとりまとめ作業が迅速化します。
②覆工コンクリート品質確保
登録したデータはクラウドサーバーを介して、現場事務所や本社・支社等支援部署と情報共有が可能です。また、Webアプリを介して、評価項目ごとの評価点推移の一覧表およびグラフを出力できます。これにより、施工方法の妥当性確認や施工方法改善対策の実施効果の見える化ができます。これをPDCAサイクルに活用することにより、覆工コンクリートの表層品質を確保・向上する施工方法選定の支援効果が期待できます。
③評価の平準化
評価点付きの覆工コンクリート写真を様々な現場で取得し、これを教師データとして学習を継続することにより、現場担当者の主観による評価点のばらつきを低減し、評価精度の向上および評価の平準化が期待できます。

■今後の展開
当社では、山岳トンネル工事における様々な課題を AI で解決するために『山岳トンネル AI ソリューション』(図4参照)の構築を一昨年度から進めており、本システムは品質確保のための要素技術です。今後は、山岳トンネルの省人化・無人化施工を目指した『山岳トンネル AI ソリューション』の構築を引き続き推進し、山岳トンネル工事の自動化、生産性向上、労働災害の低減等を進めてまいります。


※補足説明
・本アプリケーションは西松建設㈱のプライベートアプリであり、一般公開はされておりません。
・VIS(Visual illusion based-Image feature enhancement System、錯視誘発画像特徴強調システム)
東京理科大学理工学部土木工学科の小島尚人教授によって開発されたシステムです。このシステムは、残像錯視を用いる鋭敏化効果(画像エッジの強調)と、エンボス効果(凹凸部の強調)を併せもつ錯視誘発画像と、元画像のもつ特徴量の大小を定量的客観的に評価できる視認性評価画像を出力できます。
・iPad は、Apple Inc.の商標です。