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寒冷地でも適用可能な低炭素型コンクリートの開発および実用化に向けた試験体制の構築

お知らせ2021年07月27日

当社は、JFEスチール株式会社(所在地:東京都千代田区、以下JFEスチール)、国立大学法人東北大学(所在地:宮城県仙台市、以下東北大学)、および学校法人日本大学(所在地:東京都千代田区、以下日本大学)が開発した、施工に適した流動性と耐凍害性を兼ね備えたアルカリ活性材料「ジオポリマー」について、共和コンクリート工業株式会社(本社:北海道札幌市、以下、共和コンクリート工業)を加えた5者で、本材料の早期実用化に向けた試験体制を構築しました。

■背景
ジオポリマーは、製造過程で大量のCO2が発生するポルトランドセメント(※1)を使用しない新しいコンクリートであり、通常のコンクリートに比べて、製造時に排出するCO2を75%以上削減できる技術として注目されてきました(図1、図2)。一方で、混合時の粘性が高く固まりやすいなど、施工時の流動性を確保することが難しいだけではなく、耐凍害性が著しく低いため、温暖な地域でしか利用できないという課題を抱えていました。

■技術の概要
JFEスチールらの研究チームは、セメント代替となるフライアッシュ(石炭灰)と高炉スラグ微粉末(※2)の配合量最適化、高炉スラグ細骨材(※3)の活用、および特殊な混和剤の適用などによって、流動性を安定的に確保しつつ、耐凍害性を大幅に向上させた独自のジオポリマーを開発しました(図3)。開発したジオポリマーは、凍結融解試験(※4)において、JISで規定されている300サイクルを経過しても、ほとんど劣化しないことが確認されました。さらに、凍結防止剤の影響も想定した塩水環境下での凍結融解試験においても、従来品を大幅に超える凍結融解抵抗性を示しました(図4)。本開発により、寒冷地や山間部などでもジオポリマーを制約なく適用できるようになるため、コンクリート分野でのCO2排出量を大幅に削減する技術として期待されます。
今後、共和コンクリート工業はプレキャスト製品(※5)への適用を、西松建設はジオポリマーに関するノウハウを活かしたコンクリートの施工性について、実用化に向けた試験を開始し、寒冷地を含めた実環境での検証を共同で進めていきます。

当社は、「新しい価値をつくる総合力企業へ」を「西松-Vision2027」に掲げ、環境経営先進企業として、健全な地球環境を次世代に継承するための取組みを推進しています。本技術はカーボンニュートラル社会の実現に寄与するエコプロダクツであり、早期実用化により持続可能な社会の実現に貢献してまいります。


(※1)ポルトランドセメント
石灰石や珪石などの原料を粉砕・焼成して製造されるコンクリートの原料。最も一般的なセメント。

(※2)高炉スラグ微粉末
高炉から生成する溶融スラグ(製鉄時に発生する副産物)に、多量の高圧水を噴射して急冷することで得られる砂状のスラグを粉砕したもの。高炉セメントの原料。

(※3)高炉スラグ細骨材
高炉から生成する溶融スラグ(製鉄時に発生する副産物)に、多量の高圧水を噴射して急冷することで得られる砂状のスラグの粒度を調整したもの。コンクリートの原料。

(※4)凍結融解試験
試験体を急速に繰り返し凍結および融解させることで、水の凍結・融解作用によるコンクリートの耐久性を評価する日本工業規格の試験。

(※5)プレキャスト製品
現場で組み立てを行うために、工場であらかじめ製造したコンクリート製品。


図1  開発したジオポリマーの概要


図2  ジオポリマー適用によるCO2削減量


図3  ジオポリマー(開発品)


図4  塩水環境下での1cm角の小片試験体の凍結融解抵抗性