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CO2削減に貢献する新素材コンクリート製品の試験製造に成功

お知らせ2022年09月22日

― アルカリ活性材料を用いた意匠性を有する低炭素型プレキャストコンクリート製品 ―

 当社は、JFEスチール株式会社(以下JFEスチール)、国立大学法人東北大学(所在地:宮城県仙台市)、学校法人日本大学(所在地:東京都千代田区)、共和コンクリート工業株式会社(本社:北海道札幌市)と共同で、通常のコンクリートと比べて製造時のCO2排出量を約75%削減可能なアルカリ活性材料コンクリート(※1)を素材とした、意匠性を有する複雑な形状のプレキャストコンクリート製品(※2)の試験製造に成功しました。

■背景
 アルカリ活性材料コンクリートは、製造過程で相当量のCO2が発生する一般的なセメント(ポルトランドセメント(※3))を使用しない低炭素型コンクリートであり(図1)、通常のコンクリートに比べて、製造時に排出するCO2を大幅に削減できます。しかし、混合時の粘性が高く早期に固まりやすいなど、施工時の流動性を確保することが難しいため、意匠性に優れた複雑な形状のプレキャストコンクリート製品への展開が課題でした。

■技術の概要
 JFEスチールを中心とする研究チームは、高炉スラグ微粉末(※4)や高炉スラグ細骨材(※5)の活用、および特殊な混和剤の適用などによって、流動性を安定的に確保しつつ、耐凍害性を大幅に向上させた独自のアルカリ活性材料コンクリートを開発し、実用化に向けた研究を進めてまいりました。
 今回の試験製造では、開発したアルカリ活性材料コンクリートを一般的な意匠性を有する型枠に流し込み、実際の工程製造と同様の蒸気養生を施しました。完成したプレキャストコンクリート製品(図3)は、細部まで十分に充填されており、ひび割れや欠損は確認されず、短時間で脱型できることを確認しました。なお、開発したアルカリ活性材料コンクリート製品の風合いは通常のコンクリート製品と大きく変わりません (図4)。
 本試験製造の成功により、さまざまな形状のプレキャストコンクリート製品への展開が進むことで、コンクリート分野でのCO2排出量を大幅に削減することが可能となります。試作したプレキャストコンクリート製品は、今後、比較的過酷な寒冷環境において試験し、実用化に向け、耐久性の検証を進めていきます。

 当社は、環境経営先進企業として、健全な地球環境を次世代に継承するための取組みを推進しています。本技術はカーボンニュートラル社会の実現に寄与するエコプロダクツであり、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。


(※1) アルカリ活性材料コンクリート(AAMコンクリート)
高炉スラグ微粉末やフライアッシュなどの粉体、水酸化ナトリウム(NaOH)などのアルカリ溶液、細骨材および粗骨材を用いて固化させるコンクリートの総称。アルカリ活性材料は英語でAlkali Activated Materialであり、AAMと略される。アルカリ活性材料コンクリートとして、現在主に研究されているのはジオポリマーコンクリートであり、メタカオリンやシリカなどの粉体と水ガラスを用いて固化させるもの。

(※2)プレキャストコンクリート製品
現場で組み立てを行うために、工場であらかじめ製造したコンクリート製品。

(※3)ポルトランドセメント
石灰石や珪石などの原料を粉砕・焼成して製造されるコンクリートの原料。

(※4)高炉スラグ微粉末
高炉から生成する溶融スラグ(製鉄時に発生する副産物)に、高圧水を噴射して急冷することで得られる砂状のスラグを粉砕したもの。高炉セメントの原料。

(※5)高炉スラグ細骨材
高炉から生成する溶融スラグ(製鉄時に発生する副産物)に、高圧水を噴射して急冷することで得られる砂状のスラグの粒度を調整したもの。


(参考)
「寒冷地でも適用可能な低炭素型コンクリートの開発および実用化に向けた試験体制の構築」
(2021年7月27日プレスリリース)
https://www.nishimatsu.co.jp/news/news.php?no=NDcw&icon=44GK55+l44KJ44G

図1 開発したアルカリ活性材料コンクリートの概要

図2 アルカリ活性材料コンクリート適用によるCO2削減量(試算)

図3 アルカリ活性材料コンクリートで製造したプレキャストコンクリート製品の単品外観

図4 アルカリ活性材料コンクリートで製造したプレキャストコンクリート製品の積層外観