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準天頂衛星システム「みちびき」測位技術のダム工事への適用性を実証

お知らせ2022年12月22日

-ケーブルクレーン自動運転制御での利活用に向けた測位精度、受信安定性を検証-


当社は、準天頂衛星システム「みちびき」の高精度測位情報をダム工事に活用する実証実験を行いましたのでお知らせいたします。

実証実験は、当社JVが熊本県で施工中の立野ダム(国土交通省九州地方整備局発注)で行い、CLAS(※1)を用いた測位精度10cm以内(水平:約4cm、垂直:約9cm)、さらに測位の安定性を表すFIX率(※2)は約98%の結果を得ることができました。この実証実験の結果から、CLAS測位技術はダム工事におけるケーブルクレーン自動運転システムに適用できることが確認できました。

(※1 センチメータ級測位補強サービス:みちびきから送信されるL6D信号を使用した測位)
(※2 複数の衛星から良好な信号が受信され、高精度測位(FIX解)が算出可能な状態の比率)



■ 背景
本実証は、内閣府及び準天頂衛星システムサービス株式会社が、みちびきの新たな活用を考えている企業等を後押しするために、みちびきの利用が期待される新たなサービスや技術の実用化に向けた実証事業です。当社は、ダム工事における施工の効率化・高度化、さらに建設DXによる建設生産プロセスの変革を進めており、今回の実証において、ダム堤体工の自動化技術のさらなる高度化を目指し、ケーブルクレーンによる材料運搬の測位精度の検証を行いました。

ダム建設工事においては通信環境が不安定な作業が想定され、谷間でも受信しやすい準天頂衛星を活用することで、通信環境によらない高精度測位が可能と考え、CLASの実用性について検証しました。

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写真-1ケーブルクレーンによるダムコンクリート打設


■ 実証実験
実施期間:2021年11月28日~2021年12月13日
実施場所:立野ダム建設工事現場
計測機器:AQLOC-V(CLAS:IS-QZSS-L6-004対応)
リファレンス:RTK測位(上記の受信機と、近傍の電子基準点との間でRTK測位演算を実施)
評価条件:リファレンス、CLAS共にFIX解が得られたデータを比較評価
実施主体:準天頂衛星システムサービス株式会社


① 計測方法
ケーブルクレーンの材料運搬における、吊り荷(コンクリートバケット)の高精度測位を、今回の実証のターゲットとしました。吊り荷上部のフックブロックにGNSSアンテナ及び受信機を設置し、CLASでのFIX率と測位精度を確認しました。今回の計測範囲では周囲地形により河床付近では仰角が平均35度程度と衛星の可視性が制限されているため、評価は遮蔽の影響を考慮し、ダム天端(標高282m)を境として、堤体上部/下部に分類して、統計処理を実施しました。

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図-1評価基準のイメージ


② 検証結果(FIX率)
ダムの最深部(河床近く)にフックブロックを下した状態においても、CLASのFIX状況や測位精度が劣化することなく、FIX率が高い状態を維持できていることを確認できました。このことから、CLASを用いた場合でも、従来のRTK測位に代わって、コンクリートバケットの自動運搬制御などの用途で、ダム建設工事において利用可能であると考えられます。


③ 比較検証結果(測位精度)
ダムの最深部(河床近く)にフックブロックを下した状態でも、上空でFIXしている状態であれば、衛星数が減少してもFIXステータスが継続されることが確認できました。リファレンスとしたRTK測位との計測値の差を[表-1]に示しており、水平精度は約4cm、垂直精度は約9cm(FIX率は約98%)です。また、ダム天端を境として上下に分けても大きな差異は見られませんでした。


表-1作業日毎の測位精度・FIX率・衛星数の状態

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■成果
FIX率及び測位精度について、みちびきを活用したCLASのダム工事への適用性が確認できました。当社が開発し、現場運用を進めているケーブルクレーン自動運転システムでは従来からRTK測位を使用していますが、CLASの適用性が検証できたことで、RTK測位で用いられる基準局の設置が不要(設置コスト低減)、さらに基準局からの補正情報の常時受信が不要(測位安定性の向上)といった、CLASへの置き換えによるメリットの享受が期待できます。

また、国産GNSSであるみちびきを基盤とした測位システムを利用することは、サービス提供の継続性・安定性の点からもメリットがあると考えております。


■今後の展開
今回の実証実験の結果を受けて、ダム工事におけるケーブルクレーンやその他建設機械の位置情報取得へのCLASの適用性が確認できたため、他の用途を含めた効果的な活用について検討してまいります。


■関連ページ
内閣府みちびきウェブサイト
ユーザー環境性能評価:土木建設(QSS:ダム工事におけるCLAS精度検証)