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近赤外LED・カメラによる土の含水比測定装置の開発

お知らせ2022年10月04日

-一般土工事における品質管理の省力化-

当社は、西華デジタルイメージ株式会社(東京都港区、社長:福里克彦)と共同で、一般土工事などに使用される土砂の含水比測定方法について、近赤外線LEDと近赤外線カメラを用いて現場で迅速かつ簡易に測定できる含水比測定装置を開発しました。本装置の開発により、土工事に使用する土砂の含水比を迅速かつ簡易に高精度で計測でき、一般土工事の品質管理業務の精度向上・省力化を図ります。
   

■背景
一般土工事などに使用する土砂は、施工現場では日常管理として含水比測定が必須となっており、含水比測定は品質管理において最も重要な項目となっています。現在、現場の含水比測定は、主にRI(ラジオアイソトープ)を用いた透過型のRI法が用いられています。しかし、RI法は、非常に微量な放射線同位体を使用することから、現場導入時に手続きが必要なことや測定時の準備、計測に労力と時間がかかるため、より迅速かつ簡便な測定方法が求められていました。

■開発の概要
そこで、当社は、西華デジタルイメージ株式会社と共同で、現場での土砂の含水比を迅速かつ簡易に測定できる含水比測定装置を開発しました(写真-1)。
開発した装置は、水が吸収する波長帯の近赤外線LEDと光の吸収状況を測定する近赤外線カメラ(計測部)、および撮影画像を解析するPCで構成され、水が特定の光の波長帯を吸収する特性(図1)を利用し、土砂の含水比を測定します。日常の測定では、準備、測定に要する時間は2~3分程度(1試料当たり)であり、従来方法と比較して大幅に時間を短縮(約50%削減)できます。また、本装置の計測部は、光の照射に特定波長帯の近赤外線LEDを使用することで、コンパクトかつ軽量化されており、装置自体が持ち運び易い装置となっています。

具体的な測定手順は、以下の通りです。
1.事前に測定対象となる土砂の含水比と装置から得られる吸光度※2の関係を求める(図-3)
2.得られた関係から使用している現場の土砂を採取し測定を行う。

上記の通り、事前に含水比と吸光度の関係を求めることで、現場で簡単に測定することができます。従来の近赤外線を用いた測定は,同一土砂での吸光度の変化が何に影響しているのかわかりませんでした。本装置は、含水比を画像から算出するため、従来の近赤外線法ではわからなかった測定状況を可視化することで、土砂の含水比の変化の原因などを簡単に把握することができます。(写真-2、写真-3)

含水比測定装置の特長を以下にまとめます。
●現場で迅速かつ簡易に測定が可能
事前に求めた含水比-吸光度の関係から、土砂の含水比を数分で測定することが可能となり、日常の含水比測定にかかる時間(約50%削減)と手間を短縮することができます。
●非接触による測定が可能
測定手法は近赤外線の照射とカメラによる撮影のため、測定対象物に触れることなく計測が可能です。(図-2参照)
●含水比データの可視化
含水比データが撮影画像から算出されるため、測定対象に関する不具合の原因(礫や浮き水など)や試料の含水比分布を可視化することができます。(写真-2、写真-3参照)
●可搬性に優れた装置
装置は可搬性を考慮し現場内への持ち運びが可能な重量、サイズとなっており、現場内の必要な場所に持ち運び、測定ができます。

※1 炉乾燥法:乾燥炉を用いて試料の乾燥前と乾燥後の質量により含水比を測定する方法。
※2 吸光度:試料に近赤外線を当て、その反射光の減衰量を数値化したもの。

■今後の展開
今後、現場での実証試験を行い、各現場に応じた測定、活用方法を確立し、実用化および普及・展開を進めていく予定です。

写真-1 含水比測定装置

図-1 水分の吸収波長範囲のイメージ

図-2 本装置の測定イメージ図

図-3 様々な土質の含水比と吸光度の関係(例)

図-4 実際の盛土材料による乾燥法と本装置の含水比測定結果の比較

写真-2 本装置の測定によって得らえた含水比画像(例)

写真-3 画像による含水比分布図