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独自型枠システムと急硬性コンクリートを用いたトンネル連続ライニング工法 「PL-CAST™」を開発 -コンクリート面の平滑化、粉じん・はね返り量を最小化-

お知らせ2022年02月03日

当社とジオマシンエンジニアリング株式会社(社長:塚田純一)は共同で、山岳トンネル工事に用いる吹付けコンクリートの仕上りを平滑にし、粉じんやはね返り量を最小化する施工技術「PL-CAST™」を開発しました。本技術によって、吹付機のエレクターブームに搭載して動きを制御するクローラ型専用型枠と急硬性コンクリート※1を用いて、平滑なライニング(一次覆工)を連続的に施工することができます。現在、実機による施工性と品質の検証を進めており、2022年度の実用化を目指しています。

■背景
山岳トンネル工事に用いる吹付けコンクリートは、急結剤を添加したコンクリートを圧縮空気の力でノズル先端から吹き飛ばして施工します。この時、粉じんの発生やコンクリートのはね返りによるロスが施工上の課題となっています。また、吹付けたコンクリートの表面を平滑に仕上げるには作業に熟練が要求されます。このため、粉じんやはね返りの発生を低減し、経験の浅い技能者でも平滑な仕上りを実現できる技術が求められています。

■技術の概要
①施工方法
今回開発した「PL-CAST™」は、支保工の建て込みに用いる吹付機のエレクターブームに、クローラ型の専用型枠を搭載して施工します(写真-1、図-1)。専用型枠は支保工面に沿って移動し、打ち込むコンクリートは流動性が高く急硬性に優れているため、ライニングを連続的に施工できます。
②施工機械
吹付機は、小さな動きを制御しやすいようにPLC制御方式※2に改造しました。また、型枠の位置や傾きは、エレクターブームに取り付けた傾斜計や回転計、距離計などの各種センサーを用いて把握できるシステムを構築しました。これにより、型枠が支保工面に沿って安定かつ正確に移動します(写真-2)。
③急硬性コンクリート
コンクリートは高強度配合(水セメント比42%、単位セメント量450kg/m3)(表-1)を標準とし、専用の混和材(剤)を添加・混合することで、初期流動性と急硬性をあわせ持った性状を有しています。このため、コンクリートを支保工の背面隅々まで充填でき、かつ打ち込んでから60~90秒ほどで型枠を動かすことができます。加えて、平滑な仕上がりとなることも実物大模擬実験で確認しました(写真-3)。施工速度は現行の吹付け施工と同程度の実質6~11m3/h(ロス考慮)で、粉じんやはね返りによるロスを最小限に抑制します。

<本技術の特長>
・型枠は、市販のエレクター一体型吹付機に装備可能
・混和材(剤)のスラリーは、独自の混合装置でコンクリートと一体化
・型枠の位置や姿勢は、独自開発した制御システムで高精度に把握でき、PLC制御で毎分60cmほどの低速で支保工に沿ってスムーズかつ安定した動きを実現
・コンクリートは、スラリー添加量の調整により、初期流動性を有しつつ急硬性を発揮して早期自立
・粉じんとコンクリートのはね返りによるロスは、施工中、ほとんど発生しない
・コンクリート表面は、凹凸がなく平滑な仕上り

■今後の展開
本技術は、従来の山岳トンネル工事における吹付けコンクリートの施工を改良し、施工の効率化および品質向上にも寄与できると考えています。今後も現場での施工試験などを通してデータを取得し、2022年度の実用化に向けて開発を進めていく計画です。
また、西松建設では、山岳トンネル施工に使用する各重機の遠隔無人化・自動化技術を効果的に組み合わせた“山岳トンネル無人化施工システム(Tunnel RemOS)”を2023年度までに完成させる計画であり、本技術もその構成技術に位置付けられています。これらの技術を用いて、トンネル掘削作業の完全無人化・自動化の早期実現を目指して取組みを続けていきます。

※1: 急硬性コンクリートとは、急硬成分などを含有する材料をスラリー化して添加・混合したコンクリートのこと。初期には流動性が高く、その後、極めて短時間に強度が発現するため、急速施工に有効です。
※2: PLCとは、「Programmable Logic Controller」の頭文字の略。リレー回路の代替装置で、機械装置の制御に広く利用されている。私たちの生活に身近な、自動ドアやエレベーターなどの制御にも用いられています。

写真-1 吹付機を用いた実機試験状況


図-1 システム概念図

表-1 コンクリート配合例と強度レベル

写真―2 クローラ型専用型枠

写真―3 仕上り面、充填状況の実施例