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人工光型植物工場の環境下におけるホウレンソウの促成栽培方法を確立

お知らせ2022年03月14日

当社は、玉川大学(理事長・学長 小原芳明)との共同研究により、LED等の人工光源を使用した人工光型植物工場(以下植物工場)でホウレンソウの促成栽培方法を確立しました。人工光栽培が困難なホウレンソウですが、この栽培方法によって従来に比べて1.6倍も速く生育することができました。

■背景
ホウレンソウはβカロテンやビタミン類等の栄養価が高い代表的な緑黄色野菜として知られており、通年の消費量が多い野菜の一つです。露地で栽培されている一般的なホウレンソウは秋から冬が栽培適期となっており、夏場の栽培は不向きとされています。その理由としてホウレンソウは夏の気候のような日長※1が12時間より長くなることと、栽培温度が15℃以上の環境下では、商品価値が失われる「抽(ちゅう)苔(だい)※2」が発生しやすくなる特性を有しているためです。この抽苔の発生は生産者にとって出荷量減少に直結することから、その現象が発生しやすい夏の時期(7月から9月頃)は全国的にホウレンソウの生産量が激減しており、通年の安定した生産に至っていないのが現状です。
そこで管理された光や温度、かつ、虫や雑菌等が混入しにくく、農薬も不必要という安定してクリーンな環境下で栽培が可能な「人工光型植物工場」での安定生産が期待されています。植物工場では光の照射時間や温度を植物に合わせて決められることから、ホウレンソウの栽培は可能となっております。ただ生産性を高める(収穫量を増加させる)ために日長を12時間以上に延長すると抽苔の発生を助長させてしまうため、植物工場におけるホウレンソウは、生産性を高めた栽培が難しい作物の一つとなっており、生産は普及していませんでした。

■成果の概要
今回栽培時の栄養濃度、光の強さ、植え方等の環境条件について検討を重ねた新条件では、20時間の日長および20~25℃の栽培温度でも抽苔を発生させずに栽培できることを確認しました(図-1、図-2)。新条件で栽培したホウレンソウの収量は、12時間の日長である従来の条件と比較すると、同栽培期間で1.6倍増加し、生産性を高められることも確認しました(図-3)。
今回見出した20~25℃の栽培温度は、リーフレタスを栽培している一般的な植物工場の室温であり、また収穫時のサイズも植物工場で生産される一般的なリーフレタスと同等の草丈(20~25cm)となるため、リーフレタスを栽培している植物工場でホウレンソウの栽培が可能となります。
※1 1日の日照時間
※2 花芽を形成し、茎が急速に伸びる現象。トウ立ちともいいます。



   


■今後の展開
本技術について、共同研究先の玉川大学で検討している機能性付加方法と組み合わせ、植物工場において機能性成分を高含有する機能性ホウレンソウの生産方法を検討していきます。将来的に生産性と高品質化を両立させた植物栽培の技術開発を目指してまいります。