お知らせ2022年09月29日

～パイルキャップの約30％の工期短縮とコンクリート使用量約15％削減を可能に～

当社は、パイルキャップ※ の施工の合理化および既製コンクリート杭の地震時の損傷を軽減する『パイルキャップ構法』を開発しましたのでお知らせいたします。本構法により、パイルキャップの施工において安全性や生産性の向上が期待できると共に、約30％の工期短縮と、パイルキャップのコンクリート使用量を約15％削減することが可能になります。さらに杭頭部に作用する地震時曲げモーメントを低減し損傷を軽減します。（※上部構造の荷重を杭によって地盤に伝えるために設ける杭頭より上の鉄筋コンクリート構造体）

図-１　本構法の概要

■背景

既製コンクリート杭のパイルキャップは、杭の施工後に地盤を掘削し、整地・敷砂利、レベルコンクリートを施工した後に杭頭処理を実施し、配筋・型枠組立て・コンクリートを打設することが一般的です。配筋工事においては、足元が悪い杭頭部での作業となること、杭頭部の定着筋のほかパイルキャップと基礎梁や柱の鉄筋が密に配筋されることから施工性が悪く多大な労力が必要となり、施工時の安全性、品質確保などに課題があります。

また、近年では建物の高層化や杭体の高支持力化などに伴い、杭１本に作用する地震時水平力が増大傾向にあります。一般的には、杭とパイルキャップの接合部分である杭頭部は固定条件として設計されることから杭頭部に大きな地震時応力が発生し、杭頭部の損傷が懸念されます。

■内容

杭頭部に後打ち部を有するパイルキャップ構法（以下、本構法）では、プレキャストコンクリート造とするパイルキャップ（以下、PCaパイルキャップ）と杭頭部の間に充填するグラウトの施工性や品質を確認するとともに、実大の杭材・PCaパイルキャップを用いた構造性能確認実験により、地震時水平力に対する杭頭接合部の構造性能を明らかにして設計方法を確立しました。

本構法は、引張軸力が作用しない既製コンクリート杭を対象にPCaパイルキャップを用いて杭頭接合部を構築することにより生産性向上、工期短縮を図ろうとするもので、PCaパイルキャップ重量などを考慮したうえで、パイルキャップのプレキャスト範囲を計画します。

なお、本構法では、揚重・運搬を考慮し、構造性能確認実験や解析的検討をもとに在来工法に対してパイルキャップの平面寸法を縮小化しています。特に広い敷地を有する場合には、現場内でパイルキャップを製作するサイトプレキャストとすることで製作・運搬効率の面で生産性向上が可能になります。

また、本構法では、PCaパイルキャップに埋め込まれる杭の側面に緩衝材を巻き付けることにより杭頭接合部の固定度を低減し、さらにPCaパイルキャップ内に規定した鉄筋を配置することにより地震時の損傷を軽減することが可能になります。

試算では、本構法を用いることにより在来工法と比較するとパイルキャップの約30％の工期短縮、コンクリート使用量を約15%削減することが可能になります。また、地震時に杭頭部に生じる曲げモーメントを5～10%程度低減できることが可能になります。

本構法による杭頭接合部は、短期荷重時に修復性を損なう損傷を生じず、設計方法で定める剛性および許容耐力を有することについて、一般財団法人日本建築総合試験所から建築技術性能証明（杭頭部に後打ち部を有するパイルキャップ構法　GBRC 性能証明 第22-07号）を取得しました。

■ 今後の展開

西松建設は、杭頭部に後打ち部を有するパイルキャップ工法の適用を積極的に推進し、杭基礎の生産性向上および耐震安全性の向上に貢献すると共に、SDGsの観点からも、さらなる脱炭素化につながる技術や安全性の向上を目指します。

写真-1　構造性能確認実験の状況

写真-２　構造性能確認実験※語のひび割れの状況
（※所定よりも大きく荷重を作用させた後の状況）

図-2　建築技性能証明書