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「中大規模木造建築物の実現」への取り組み強化

お知らせ2022年11月21日

中高層木造建築構法で日本建築センターの個別評定を取得


 当社は、「中大規模木造建築物の実現」へ向けた取り組みとして、10 階建て共同住宅のモデルプランで、一般財団法人日本建築センターの評定を2022 年10 月14 日に取得しました。
本評定は、株式会社市浦ハウジング&プランニングを代表とする「P&UA(※1)構法共同技術開発グループ」(※2)との共同研究開発により取得しました。
 本構法は、一方向ラーメン構造と耐力壁を木造で架構するもので、新たに開発した「GIUA(※3)」と「シアリングコッター耐力壁」を用いることで、高耐力・高剛性・高靭性を実現します。
(※1)Panel & Unbonded Anchor の略称
(※2)技術開発者:㈱市浦ハウジング&プランニング、㈱織本構造設計、東急建設㈱、戸田建設㈱、東レ建設㈱、西松建設㈱、㈱長谷工コーポレーション、三井住友建設㈱
共同研究者:京都大学 五十田教授、近畿大学 松本准教授、広島県立総合技術研究所林業技術センター
協力者 :アルファ工業㈱、内田技建、㈱ウッドワン、エイコー㈱、㈱河本組、桜設計集団、㈱中東、藤田K 林産技術士事務所、銘建工業㈱ (以上、五十音順)
(※3)Glued in Unbonded Anchor の略称


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■開発の経緯
 現在、我が国ではSDGs やESG 投資の拡大を背景に中高層木造建築への関心が高まっています。これまで木造では、構造設計ルート1 又はルート2(許容応力度設計)でほぼ全ての建物が設計されてきました。一方で、中高層木造建築物でルート3(保有水平耐力),Ds=0.3 を実現した構法はなく、加えて本構法に限らず対象規模となる木造の構造性能は十分に検証されておらず、構造設計手法は確立されていません。また、木質材料全般の課題として、脆性破壊を防止する靱性の確保、荷重変形関係のスリップ防止、接合部の高い曲げ剛性と耐力の確保などが課題となっていました。
 そこで、当技術開発グループでは、これらの課題を解決する新たな構法となるP&UA 構法の開発に着手し、10 階建て共同住宅に鉄筋コンクリ-トスラブを採用し、ルート3,Ds=0.3で設計したモデルプランにおいて、日本建築センターの評定を取得しました。



■P&UA 構法の特徴
本構法は、新たに開発をした「GIUA」と「シアリングコッター耐力壁」の2 つの技術を用いた構法です。

① 「GIUA」(特許出願済:㈱市浦ハウジング&プラニング)
中大規模木造で一般的な鋼棒挿入接着接合であるGIR(Glued-in Rod)に、鋼棒をあえて接着させないアンボンド部分を設けた接合構法です。このアンボンド部分により、従来のGIR で生じていた脆性的な木材割裂を抑え、大変形時まで木材を損傷させずに鋼棒が伸び縮みすることでエネルギーを吸収する機構となっています。
工場で柱・梁の木材端部にGIUA を施工しておき、現場ではこの柱・梁を鉄骨のパネルゾーン(柱梁のジョイント部分)にボルトを用いて緊結するだけであり、施工の省力化が図れます。

② 「シアリングコッター耐力壁」(特許出願済:㈱市浦ハウジング&プラニング)
LVL やCLT 等の木質パネルを上下に並べ、パネル間に設けた切り込みにL 型に折り曲げ加工した鋼材(コッター)を組み合せ差し込んで接続した耐力壁で、建物フレームとは鉄骨プレートとボルトにより接続します。
地震時には、上下の木質パネル間で2 枚の耐力壁パネルがスライドしようとするため、パネル間に差し込んだ鋼製コッターが変形することにより、地震による力(地震エネルギー)を吸収します。大変形時まで木質パネルを損傷させず、コッター部分が変形してエネルギー吸収する機構となっているため、一般の木質耐力壁に比較して優れた変形性能とエネルギー吸収性能を有しています。

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■今後の展開
 現在、複数の実物件での採用が計画されており、今後は適用物件の拡大を図るために以下の開発を行う予定です。

① さらなる高層建物への適用に向けた開発
二方向ラーメン架構・ロッキングコッター耐力壁・耐震間柱・RC 造やS 造との混構造・制振構造・免震構造

②構造的な合理化に関する開発
継手・仕口の炭素繊維補強,梁貫通スリーブの補強、他の木質材料の柱・梁・耐力壁への適用

実物での確認と振動台実験
GIUA を用いた一方向ラーメン架構とシアリングコッター耐力壁はRC 造やS 造の耐震補強など幅広い応用開発、個別評定(プラン限定評定)の拡張、構法に対する一般評定の取得へ向けた展開