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山岳トンネルに用いるドリルジャンボによる一連の施工動作を無人化する『Tunnel RemOS-Jumbo』を開発

お知らせ2022年07月27日

-山岳トンネル無人化施工に向けて着実に前進-

 当社は、ジオマシンエンジニアリング株式会社(東京都荒川区、社長:塚田純一)、株式会社カナモト(北海道札幌市、社長:金本哲男)、古河ロックドリル株式会社(東京都千代田区、社長:荻野正浩)と共同で、山岳トンネルの施工に用いるドリルジャンボによる一連の施工動作を無人化する『Tunnel RemOS-Jumbo(トンネルリモスジャンボ)』を開発しました。


 当社では、かねてより山岳トンネル施工重機の遠隔操作技術・自動化技術を組み合わせた山岳トンネル無人化施工システム『Tunnel RemOS(トンネルリモス)』の開発を進めています。今回開発したドリルジャンボ遠隔操作システム「Tunnel RemOS–Jumbo」は、『Tunnel RemOS』の取り組みの一つで、「Tunnel RemOS-WL」、「Tunnel RemOS-Meas.」、「Tunnel RemOS-Lining」、「TunnelRemOS–RH」に続き5つ目の要素技術となります。

山岳トンネル無人化施工システム『Tunnel RemOS』の構想

■ 開発の背景
 建設業では、ベテラン技術者の引退や若手入職者の減少によって、将来的に施工品質の低下や労働力の不足が懸念されます。また、山岳トンネル工事では切羽における肌落ち災害がたびたび発生しており、作業員が切羽に立ち入る機会の削減、さらには切羽作業の無人化が課題となっています。

 このような背景から、当社ではトンネル施工重機を対象とした無人化施工技術の開発に取り組んでいます。今回実証確認を行ったドリルジャンボは爆薬装填のための削孔、ロックボルト工、削孔検層等の多くの場面で用いられることから、無人化による安全性や施工品質の向上、省人化等の効果が大いに期待されます。


■ システムの概要
 今回開発したドリルジャンボ遠隔操作システム『Tunnel RemOS-Jumbo』により、ドリルジャンボの走行から削孔までの坑内での一連の施工動作(①~③)を無線で遠隔操作することが可能です。

 切羽から離れた位置に配置された遠隔操作室には、走行のためのレバーやペダル、削孔のための操作盤を備えたコクピットや、映像を映すためのモニタが設置されており、切羽近傍の作業状況動画、音、振動を体感することができるため、実機に搭乗している状態に近い感覚でドリルジャンボを遠隔操作することができます。また、切羽作業に合わせて遠隔操作室内の設定を切り替えることで、共通の設備を用いて他の重機も遠隔操作することが可能です。

 ドリルジャンボには、遠隔操作室からの操作信号に基づいて機体を制御するための機体制御盤や、機体の周囲や切羽を映すための複数のフルHD カメラを搭載しています。また、遠隔操作室からの操作信号やドリルジャンボ側で取得された各種データは、坑内と機体に設置した無線通信設備によって伝送されるため、無線での遠隔操作に加え、地山評価のための削孔データや将来の自律施工に向けた施工データの取得が可能となっています。


 なお、本システムは古河ロックドリル社製の全自動ドリルジャンボ『J32RX-Hi ROBOROCK®』をベースに開発を進めており、同社独自の遠隔削孔技術『遠隔穿孔操作システム』と当社の『Tunnel RemOS』を融合させることでドリルジャンボによる一連の施工動作を遠隔操作可能としました。


遠隔操作室におけるドリルジャンボの遠隔操作


ドリルジャンボ遠隔操作システム『Tunnel RemOS-Jumbo』の構成

①走行・設置
 坑内電源と接続してから切羽までの往復移動、作業位置での停止、アウトリガの張り出しや収納といった走行・設置に関する全ての動作を遠隔で行うことが可能です。また、遠隔走行時の安全性を確保するために、後進時に機体後方のデプスカメラで人が検知された際や緊急停止スイッチが押された際には機体が自動停止する仕組みとしています。


②削孔作業
 レバー操作で手動削孔を行う“遠隔マニュアル削孔機能”または事前の設定通りに自動で削孔を行う“遠隔フルオート削孔機能”を遠隔操作室内の操作盤で制御することによって、3 つのブームを1~2 名で遠隔操作可能です。


③ガイダンス
 削孔の位置や角度、ブームの現在位置を遠隔操作室内のモニタでリアルタイムに確認できるため、遠隔操作時においても高精度な削孔が可能です。また、削孔の進捗や削岩機の稼働データといった削孔データが自動的に収集・解析され、トンネル周辺地山の岩盤強度等の評価結果も即座に可視化されるため、客観的な地山評価や危険箇所の早期把握が可能です。

削孔データの表示例



削孔データに基づくリアルタイム地山評価の例

■ 実証試験の状況と今後の展開
 鉄道建設・運輸施設整備支援機構北海道新幹線建設局発注の「北海道新幹線、磐石トンネル(北)他工事」にて実証試験を行った結果、施工に影響を及ぼす通信上の不具合は生じず、ドリルジャンボによる一連の施工動作を無線で遠隔操作可能であることを確認しました。今後は、削孔後の爆薬の装填やロックボルトの挿入、長尺削孔時のロッドの継ぎ足し等も遠隔操作で実施可能とするためにシステムの改良を進めていきます。


 当社は、山岳トンネル施工に使用する各重機の遠隔無人化・自動化技術を効果的に組み合わせた“山岳トンネル無人化施工システム(Tunnel RemOS)”の開発に関する取り組みを続け、2023 年度までに各技術の実証試験を完了し、2027 年度までの実用化を目指します。

※補足:2022 年1 月31 日 リアルタイムな地山評価により山岳トンネルのさらなる安全性向上や合理的施工を実現