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廃食用油の全量で、HiBD※1の安定的な製造を実現

お知らせ2024年01月29日

~家庭から回収の廃食用油もHiBDの原料として利用可能に~

 当社と佐賀市(佐賀市長:坂井英隆)は、環境エネルギー株式会社(本社:広島県福山市、社長:野田修嗣)の協力を得て、佐賀市内の家庭および事業所で回収された廃食用油を原料として、第2世代バイオディーゼル燃料であるHiBDの安定的な製造を実現しました。


■ 背景

 当社は佐賀市と公募型プロポーザル方式にて共同研究契約を20201030日に締結し、HiBDの実用化研究を進めてきました。本共同研究では、これまでに、事業所から回収される廃食用油(以下、事業系廃食用油)を原料とし、HiBDの製造安定性や燃料品質の確認、建設機械(発電機、バックホウ)における100HiBDの適合性、市営バスやごみ収集車で使用の軽油における50%混合HiBDの適合性を実証してきました。
 一方で、市内の家庭から回収される廃食用油(以下、家庭系廃食用油)は、原料品質のばらつきが大きいことや、回収油中の夾雑物の多さ等の理由から、HiBDの製造原料として利用していませんでした。市内で回収した廃食用油の全量をリサイクルするうえで、家庭系廃食用油も利用可能な原料として幅を広げることが課題となっていました。


詳細

 家庭系廃食用油のHiBDの原料としての利用可能性について検討を行い、以下の2点がHiBDの原料として適さない要因であることがわかりました。

①家庭系廃食用油は、回収ロット毎に酸価値に大きなばらつきがあり、の製造プロセスでの触媒による脱酸素反応へ悪影響があること。
②家庭系廃食用油中には、微細な浮遊夾雑物が混在しておりHiBDの製造プロセス内の触媒活性を低下させる要因となっていること。

 要因①に関しては、回収ロット毎に酸価値を確認、混合することで、HiBDの原料品質としての酸価値指標を充足できるようになりました。また、要因②に関しては、追加設備を増設することなく、回収ロット毎に静置沈降分離処理を行うことで、微細な浮遊夾雑物を除去でき(写真2)、HiBDの原料として利用可能であることを確認できました。
 このような自主基準を設けることで、家庭系廃食用油もHiBDの原料として利用することができるようになりました。
 家庭系および事業系の廃食用油を、月別のそれぞれの回収比率に基づいて混合した原料を用いて、HiBDを安定的に製造できることも確認しております。今回、家庭系廃食用油もHiBDの原料として利用可能となったことから、年間を通して、市内で回収される廃食用油の全量をリサイクルすることが可能になります。


■ 今後の展開

 当社は、2050年カーボンニュートラルに向けてCO2削減計画「ZERO30ロードマップ2023」を策定しており、その計画達成に向け、HiBD等の第2世代バイオディーゼル燃料の現場導入の検討を進めてまいります。また、自治体との連携による地域の脱炭素化の促進に取り組み、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。
 佐賀市は、2010年に環境都市宣言、2020年には「ゼロカーボンシティさがし」を表明し、「地域循環共生圏」づくりを推進しています。今後とも限りある資源を有効活用しながら、資源を融通し合うネットワークを築くために市民・企業と共に取り組んでまいります。



1HiBD(高品質バイオディーゼル燃料):廃食用油等の油脂に対して、触媒を用いた脱酸素反応を行うことにより得られる軽油と同等の炭化水素油で、HiBD研究所の藤元所長の特許技術により生成した燃料。
(写真1:HiBD製造プラント、図1:HiBD製造プロセス)

(参考)
・本多、石渡、小栗、阿部:炭化水素系バイオディーゼル燃料の実用化研究、土木学会第49回関東支部技術研究発表会、2022
・「廃食用油から製造した次世代型バイオディーゼル燃料の建設機械への適合性を初めて実証」(20230310日プレスリリース)

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写真1 HiBD製造プラント


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図1 HiBD製造プロセス


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写真2 家庭系廃食用油および事業系廃食用油の静置分離の様子